夫婦ですが何か?Ⅱ
Side 千麻
心静かに。
無感情に近い感覚で、コーヒーをカップに注いでカウンターに頬杖ついてこちらを見つめている彼女に差し出す。
『ありがとう』と小さく声を響かせ、すぐにそのカップを口に運んだ彼女の視線は未だに私で。
見て見ぬふり。
気がついてはいても気がついていないふりでシンクの食器を洗っていれば。
「・・・・・やっぱり・・・謎、」
「・・・・・何か?」
不意に響いた声にさすがに無反応でいられず、投げられた疑問に疑問を返して視線を移す。
彼女と言えば相変わらずな無表情で怯むでもなく私を見つめ返していて。
再度コーヒーを一口含むとゆっくりカップを下してようやく返答。
「昨日からずっと・・・、結婚した時からずっと不思議だったの、」
「・・・何がでしょうか?」
「うん・・・・なんか・・・茜のタイプの子じゃないなぁ。って、」
不意打ちの爆弾。
そしてまた悪意のないそれに自分だけが無駄に感情を揺らしそうな。
彼女からすれば客観的な感想なのだろう。
今まで彼が好んだ女性との対比で。
だけども捉え方を少し捻って、接続する言葉を予測すれば。
『タイプじゃないのに、何であなたが選ばれたの?』
と、繋がりそうで。
ああ、私・・・嫌な女。
「・・・・成行きです。
それこそ最初はそんな感情無しであったのが、情が芽生えて、それに『愛』なんて漢字が追加された情に変わった。・・・と、言うところでしょうか」
「ああ、・・・成程、」
納得だという響きでカップに口をつけた彼女をチラリと確認する。
本当に些細な疑問だったのだと感じる姿を捉えれば、余計に自分が抱いた感情に自己嫌悪してしまうのに。
今も結果モヤモヤとしながら洗いあがった食器を拭いて、それでも数時間前の自分よりは感情的でないと安堵もする。
やはりスタイル変更の効果。
仕事よ・・・・千麻。
その言い聞かせが自分の身も救う。
このまま必要以上の接触を持たなければいいのだと、再び自分のペースで家事をこなそうと思った瞬間。
「・・・・どこが好きなの?」
どこが?
どこも余すことなく全て・・・。
なんて、惚気た事は言わないけれど。