夫婦ですが何か?Ⅱ
私の要求に何やら複雑な笑みで躊躇い、応じるのに間があった拓篤。
今更、部屋が散らかっているとか、TVにやましい画像がついてるやら、そんな理由の拒絶だろうか?
と、一瞬は頭に疑問を抱き。
それでも本当に『今更』だと押し切れば、渋々その身を退けて中への入室を許してくれた姿。
それに遠慮もなしに入りこみ、靴を脱ぐと中へ進む。
背後で小さく溜め息をついた彼も追って廊下を進み。
一体どんだけ乱れた生活をしているのかと入室したリビングを視線で一周。
「・・・・なんだ、片付いてるじゃない。・・・・・物に溢れてはいるけど」
「うん・・・まぁ、まだ引っ越したばかりだから・・・これからだよね・・・」
「あんまり渋るからどれだけ足の踏み場がないのか?とか、お楽しみの邪魔だったかと考えすぎてたわ」
「っ・・さすがに・・昼間からは・・・」
「・・・・」
「・・・時々だけ、」
馬鹿。
棚に収まらなかった本やDVDなんかが積み重なってはいるけれど、生活空間としてはままなっているその部屋。
彼の部屋としては充分に片付いていると言える。
そしてやましいような映像もTVには映しだされておらず、それを指摘すれば赤面して否定を示した彼。
でも、意地悪く視線で追及をすれば馬鹿正直に補足を告げて視線を逸らして。
相変わらずな姿に今までの自分の葛藤も吹っ飛んで口の端が上がってしまった。
「あっ・・・良かった」
「えっ?」
「いや・・・その・・・笑う元気は残ってるんだなぁって、」
「・・・・」
「そ、その・・・えっと、・・・茜君に・・・喧嘩したって聞いて・・・」
「・・・・・・お喋り、」
「ごめん・・・」
何故か訳知りな感じに安堵の笑みを向けてきた拓篤に探るような視線を向ければ白状。
あっさりと浮き上がった彼の存在に、眉を顰めてぼやく様に呟けば、何故か謝る非のない拓篤がその言葉を口にする。
でも、そうか・・・、話したのか。
そして【喧嘩】だと。
これは喧嘩になるのか?
「・・・・喧嘩とは・・・違うと思うのよ」
「そ、そうなの?」
「多分・・・・一方的に私が事を複雑化しているだけよ」
彼に非はないのだ。
むしろ被害者に近い。
そう自分に非を全て纏って皮肉に笑って見せ、すぐに与えられた感触にその笑みを掻き消された。