夫婦ですが何か?Ⅱ
そっと頭の上に置かれた手。
それを確かめるように視線を上げて、すぐに彼の顔の方へ移動。
捉えたのは少し気まずそうに下手くそな笑みを浮かべる姿で、追って補足のように響く声。
「えっと、・・・・我慢や・・後回しはダメだよ?・・自分の、」
「・・・・」
「ほら・・・その、千麻って・・・全部自分に責任当てて他の人を擁護しちゃうところあるから・・・・、それやってると・・・自分を嫌いになっちゃうよ?」
「・・・・・元々、私は自分が好きなんてナルシスト思考ないけど?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・・えっと、・・・どう言えばいいのかな?
僕はただ・・・僕が好きな千麻のいい所まで否定してほしくないっていうか・・・自信を持ってほしいっていうか・・・」
「・・・・・【好き】、」
「・・・・・・っ、あっ!!でもっ・・・でも、その恋愛な意味じゃなくてっ、に、人間性?そ、そんな・・・」
「うんうん、わかったから・・・そんな死にそうなくらい羞恥心で取り乱さないで」
不器用な拓篤のフォロー。
不器用だけどもまっすぐに届く言葉にじんわりと温かくて、少しどこかくすぐったいような。
それを誤魔化す為に彼が突かれて困る部分を拾い上げてみれば、・・・効果覿面。
効きすぎて、放っておいたら死んでしまいそうなくらいに赤面し両手を振って否定を示す彼に苦笑い。
本当に・・・不器用だけども和ませる何かを持っている人だ。
こんな空気が好きで・・・、
今も好きだと感じる。
癒されて、浄化されて、力が抜けて。
解放されて。
疲れた体に覿面に効く薬みたい。
少しだけ、
そう少しだけ・・・・。
「・・・・疲れたの、」
「・・・えっ?」
「・・・・悩むのに・・・疲れたの。・・・・だから・・・少し、休んでいってもいい?」
「・・・・・・・えっと、」
「あの部屋にいたら・・・自分が嫌いになりそうで・・・・」
「・・・・・うん・・・・・うん・・・、少しでも・・・楽になるなら、」
狡い方法だ。
少し迷った拓篤の言葉を遮って、自分の不安定さを強調して要望を通して。
こう言えば拓篤は受け入れると確信あってその言葉を口にしたんだ。
でも、嘘はない。
本当に今はあの部屋にいるのが辛い。
この部屋にいる方が息が出来るのだ。
だから・・・少しでいいの。
彼が帰ってくるまでの間に少しでも回復して、彼に平常であれるように休ませて。