夫婦ですが何か?Ⅱ





でも自分にとって甘さ感じる好条件をみすみす見逃すはずもない彼が、嬉々とした表情で私の後を追って来る。


振り返らなくても彼の表情は分かるのだ。


意地悪に悪戯に、笑って私の心の内を探っているのでしょう?



「ねぇ、・・・妬いてる?」


「今更ですね。しかも相手はあなたの恋愛面での土俵に上がる事もない存在ばかりでしょうに?」


「まぁね、」


「その相手があなたも心揺らす程の視界に入る女性なら危惧も不安もいたしましょう。でもたかだか羨望の眼差し送る多勢の女にはあなたが望むような嫉妬の感情は抱きません」



はっきり言い切った言葉は本当。


今更ミーハーな女子社員に妬いて取り乱すほど自分に自信がないわけじゃない。


そう、抱いたのはヤキモチとは少し違う。


言うなれば・・・、



「じゃあ・・・優秀で有能な千麻ちゃんは、【仕事】の面で大人になった俺の隣に早く並びたくて焦燥感抱いたんだ?」


「・・・・・」


「ははっ・・・図星だ?」



うっかり彼が喜ぶような驚愕顔で振り返り、視線が絡んだ瞬間に失敗したと眉根を寄せてしまった。


その反応も彼の答えを肯定するような物であるのに。


勝ち誇って微笑む姿に悔しさ募らせようと反論する言葉も持たず。


むしろ反論すればする程逆に自分の逃げ道を失うだけなのだ。


だからこそ、この場面は自分の抱いている感情の暴露が正解。



「・・・・・貪欲なんです」


「・・・うん、」



完結に結論を告げれば、補足なしでは伝わりにくい答えも全て理解している様に笑う彼の反応。


しかも事細かく理由を聞いたようにクスクスと笑っての反応だから眉根を寄せて不満示しての言葉の補足。



「貪欲な私は・・・【妻】と【母親】だけじゃ満足できない」


「フフッ・・・うん、だろうね・・・・」


「【仕事】でも・・・、あなたを理解し隣り合えるのは私だけ・・・」


「・・・独占欲半端ないね?」


「あなたの妻ですから」


「最高だよ・・・・、俺の貪欲に並んでついてこれるくらいじゃなきゃその隣は任せられない」


「・・・・・・ああ、やはり・・・認めましょう。・・・嫉妬です」


「ん?・・・嫉妬?」


「ミーハーな彼女達に。

・・・・少なくとも・・・私より仕事の面であなたの役に立っているであろう彼女たちに嫉妬します」



そう告げて、困ったように眉尻下げて口の端を上げれば、彼の姿を捉えたのは一瞬。


一瞬の直後には視界ではなく体感で彼の存在を目の前に捉えた。


< 45 / 574 >

この作品をシェア

pagetop