夫婦ですが何か?Ⅱ




もう分かっていた筈の終わりを追体験して、その物悲しさに少し胸が痛むのに。


でも、


彼と離れているこの現状ほど悲しくはならない。


明確に理解する。


私の【ものさし】はもう彼が基準になってしまっているんだと。


では、なぜ・・・・、


またこんな彼を拒絶する倦怠感に苦しんでいるのか。


ああ、そんな事を考えていればまた・・・。


悩みすぎていたせいなのか再び胸が焼けるような感覚に軽く眉をしかめて。


それでもさっきほどのそれではないと、すぐに微々たる倦怠感を押しこんで表情からは隠す。



「あー・・・でも、良かったぁ・・・」


「・・・・・何が?」


「ん?いや、茜君との約束破るような事にならなくてさ・・・」


「約束?」


「うん、・・・『自分を縛りつけてでも千麻に手を出さない』そんなカッコイイ男の約束したのに・・・うっかりちょっとグラついちゃった・・・」



えへへ。


そんな風に眉尻下げてバツが悪そうに笑う拓篤に思わず眉尻を下げて唖然として。


でも、すぐに同じように気まずい感覚でクスリと笑う。



「嗾けるような一言を言ったのは私だわ。・・・こんな事知れたら『無防備』だってまた彼に詰られていじけられるところ・・・」


「ははっ、詰って【いじける】んだ。そこで激情的に怒鳴ったりじゃないところが茜君っぽいなぁ」


「そうね。でも逆に性質が悪いのよ?怒って怒鳴って挑んで来てくれる方がまだやり返す術があるのに・・・。

あんな風にいじけて『かまって』なんて後ろ姿を見ると思わず更に虐めたいって指先が伸びて・・・」


「ふはは、結果的に虐めちゃうの?本当に・・・・千麻は茜君が好きなんだねぇ・・・」


「っ・・はぁっ!?」


「だって、・・・千麻って好意の対象虐めるの好きでしょ?それが愛情のバロメーターっていうか・・・、僕も結構それに困って、でも・・・嬉しかったなぁって、」



本当・・・、


時々拓篤は私の微々たる乙女心をくすぐるのが上手い。


最後の一言は切ない物も感じるけれど・・・・ジリっと胸が熱くなったわ。



「・・・好きな子ほど虐めたい、」


「フフッ、・・・うん、」


「なんて・・・、やっぱり私は愛される可愛いヒロインではなくて意地悪に甘く責めるヒーローが向いてるのかしら」


「・・・・・・その考えでいくと・・・僕と茜君はヒロインだよね?悲しいかなその要素強いし・・・茜君なんて女装したら美人そうだよねぇ・・・」


「・・・・話が逸れていってるけど同感よ」



思わずその言葉のままに出来る限りの想像を脳内で膨らませれば、悲しいかな失笑も出来ない程美人な仕上がりになってしまい同調の言葉を吐く。




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