夫婦ですが何か?Ⅱ
あの生き物が女という性別であったならどれだけ世の男を魅了したのだろうか。なんて考えも浮上して。
思わず自分の愛娘の行く末を心配してしまうほど。
性格が歪まないように育てなければ。と。
ただでさえあのグリーンアイは人を惹きつける要素が強烈なのだから。
そんな事を考えて一息ついたと同時に、目の前でゆっくりと立ち上がった拓篤の姿に意識が戻って。
どこに行くのかと見上げて視線で問いかければ、気がついた拓篤がすぐにふわりと笑って答えを落とす。
「千麻も大丈夫そうだから・・・、ちょっとコンビニに、」
「あ、うん。・・・いってらっしゃい・・・」
「すぐに戻るよぉ。なんかお酒的な物、飲みたくなっちゃって、」
言いながら玄関に歩きだす姿に軽く片手をあげて、パタリと扉が閉まった音を聞き入れながら色々な事が頭によぎって。
疑問を確かめるように自分の両手のひらを見つめて、やはり疑問に眉根を寄せる。
しばらくその違和感の謎解きに集中して、それでも解明できないと諦めたように息を吐くと、ゆっくり立ち上がって冷蔵庫に向かう。
何か飲みたい、水とか炭酸水とか。
一瞬は他所の家の冷蔵庫という事で躊躇いはするものの、遠慮する仲でもないかとゆっくりそれを引いて開ける。
扉の裏側に数本あるペットボトルを迷わず掴んで、すぐに扉を閉めようとして閉め切る前にその手が止まった。
そして再度確かめるように扉を開いて。
「・・・・・・嘘つき、」
コンビニに・・・何の用があったっていうの?
捉えたのはストックされたビールの缶。
【お酒的な物】の在庫を複雑な心情で見つめて数秒。
冷蔵庫が『いい加減に閉めろ』と非難するような音を立てて、溜め息をつくと静かに閉めた。