夫婦ですが何か?Ⅱ



Side 拓篤


ふわりと、涼しいのか生暖かいのか判断のつかない風がすり抜けて。


自分の中途半端な現状によく似ていると思いながら夜空を見上げて。


星が少ない。


それでも雲もない濃紺の空に見惚れて早くも遅くもなく歩みを進める。


馬鹿だな・・・。


すぐにばれるような言い訳をつけて外に逃げだして。


改めて引かれた一線に理解して納得しているのにやはり少し苦しくて。


言い聞かせても、歯止めが効かなくなりそうな自分を縛るなんて真似は本当に出来ず、こうして彼女から遠ざけるようにその身を逃がした。


でも、



「千麻は・・・感がいいからな・・・」



今頃は気がついているかもしれない。


俺の取ってつけたような言い訳の逃亡に。


そういう感はいいのに・・・、



「相変わらず・・・・無防備で・・困る、」



変わらない彼女の姿。


さらりと無自覚に他者を誘惑して、それに本人の意思がないから余計に悶えて手を伸ばしたくなる。


いや、伸ばして・・・・本当に危うい接触を謀って。


だから・・・僕は今夜風に吹かれているんだった。


そんな結論にたどり着くと同時に視界にも目的のコンビニを捉え始めて。


さて、どう次の言い訳として時間工作をしようかと思案した。


のは・・・一瞬。


店舗を視界に捉えた瞬間に、同時に捉えていた人の気配。


店の外壁に数人たむろしているのは捉えていた。


少し若い男2人と女1人。


自分とは相いれなさそうな男2人組と言うだけで、どこか身を小さくして歩みを進めて。


不意にもう一人の紅一点に視線を走らせれば・・・。


まさに【紅】一点。


見間違うはずがないくらいに、現実的でない美麗さで立つその姿は紅さんだと判明。


場にそぐわない。


むしろ何てことない住宅地の一角なのに、彼女が立っているだけでどこかその場を独特な物に見せているようにも感じて。


無表情で、無気力で、似合わなそうなビール缶片手に、それすらも不可欠な小道具の様な。


そんな中に違和感を感じるとしたら、・・・・あの2人。


あの2人がいなければどこか完成した一枚の絵の様だったのに。


何だか完璧であった芸術を汚されているような感覚に苛立つのは自分の性分。


変なところで情熱的すぎると千麻はよく言っていた。


知りあいなのだろうか?


だとしたらこんな考えは失礼だと思いつつも、すぐに彼女が帰国したばかりだと得た記憶の浮上。

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