夫婦ですが何か?Ⅱ
語っても無表情のまま反応もない彼女に逆に不安になって。
悪意は一切ない賞賛のつもりだったのにどんどん怯んで眉尻が下がる。
ああ、やはり不快だったのか。
知ったかぶって彼女を語って、もっと崇高なものを秘めていたのかもしれないと、自分の発言に後悔し始めた瞬間。
「・・・・・単に・・馬鹿なの」
「えっ?」
一瞬自分に向けた言葉かとドキリとして。
でもすぐに、そうでないと絡まなかった視線で理解した。
少し考え込むようにその視線は違う所を見つめていて。
見つめているのは現実的なものでなく自分の心の内の様な。
そんな一瞬も綺麗に見せる彼女を芸術的感覚で見つめて。
「・・・・馬鹿みたいに・・・それしか知らないの」
「えっと・・・・仕事?」
「子供の頃からね・・・その環境の中で生きてきて、そのドレスを着こなすのが夢で、目標で、自分の存在価値で、・・・・・それしか頭にないから・・・・他の感情がおざなりなの」
「な・・・なるほど、」
「そんな自分に嫌にもならないし・・・悲しくもない。嘘臭い繋がりなんて面倒だから私を知っても傍にいてくれる人だけで充分だし・・・」
「・・・・・でも、・・・寂しい?」
馬鹿だ。
悲しくないと言いきっている彼女にこんな事を追求して。
でも、そう問いたくなるような【無表情】に意識より早く口から零れて。
いった後に『しまった』と口元を覆ったくらいで。
でも、・・・・間違いじゃなかったらしい。
ゆっくり戻って絡んだ目で分かる。
『そうだ』と肯定するような彼女の目に、ゆっくり口元を覆っていた手を下していき。
「その・・・穴埋めが茜だったのかもね・・・」
「・・・・・バランスをとる・・・・ピースみたいな?」
「・・・そこまで・・・大層な物かは分からないけど、・・・あの子は、理解して傍にいるだけじゃなくて・・・・もっと、より私を知るように懐いてきたから・・・」
「ああ・・・うん、茜君っぽいね・・」
「私の私的には出さない感情を読み取るのが上手くて、懐いて、甘えて、・・・・そんな茜が可愛くて、独占したくて。
・・・・お互いに、恋とかそんな物じゃないって分かってたんだけどね。血が繋がってないって事実が逆にストッパーなくて、
・・・・なんか気がついたら食べちゃってたわ」
「えっとぉ・・・、ここは笑うべきポイントでしょうか?」
確かに途中まではいい感じの感傷な響きだったのに、落ち付近で怪しくなり、結果複雑な言葉を無表情で淡々と言い切った彼女に思わず確認。