夫婦ですが何か?Ⅱ




だって、食べちゃったって・・・。


勿論そういう意味合いな【食べちゃった】で。


いや、勿論今までの流れで茜君と紅さんの関係はそういうものだって知ってたけどさ。


今の会話の流れでどうしてその話題があがったんだっけ?と一瞬会話の原点を忘れかけて。


でも、原点に軌道修正したのも彼女。



「・・・・疲れて・・・ちょっと不安だったのかも、」


「えっ?」


「仕事への熱情と、現実とのバランスが取れなくなってきてて。・・・・ほら、・・・一応相当なケアを施してそれなりに保ってはいるけど・・・・私・・・35だし」


「あっ・・・はい、・・・・見えない・・・ですけど」


「うん、・・・35には見えなくても・・・・20にも見えないでしょ?・・・・・大人っぽくなんてね、20の女の子でも作れるの。でも・・・・35の女が20の女の子は作れない」


「・・・・け、化粧とか、」


「・・・・男の人には分からないかもしれないけど・・・化粧ノリがまず違う・・・・、女の子ならすぐに分かっちゃう・・・」


「た、大変ですね・・・」


「うん・・・、だから・・・・不安になっていく」



ああ、無表情は変わらないけれど分かる。


本気でそれを懸念して、本気で不安を感じている。


彼女が子供の頃から熱情持って関わってきた世界は、その中の彼女の役割の仕事は・・・、美しいけれど儚い物で。


年齢が上がるごとに制限されて息がしにくくなる。


自分は男で、更に言えばかなり無縁の測りかねる世界だけども、自分が好きな世界にセーブをかけられるのは辛いだろうな。


まったく彼女とは異なるけれども、自分も熱を上げる世界があるから理解出来る。


他の人からは理解されなくても、自分には価値があって、そこに自分の存在価値もあって。


でも、その世界に居たくても居場所が狭まったら・・・きっと、



「・・・・・・・何?」


「あっ・・・・すみません。・・・なんか、勝手に、」



気がつけば自分の指先が彼女の頭に触れて、そっと髪を滑り降りるように撫でていて。


その行為に憤るわけではないけれど、疑問の声を響かせた彼女にようやく正気になってパッと手を離した。


何やってる?


僕・・・。


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