夫婦ですが何か?Ⅱ
無意識に女子の頭を撫でてしまった。
信じられないという感じに自分のその手を見つめて、またらしからぬヒーローぶった行動に羞恥心の浮上。
一瞬で赤く染まったであろう顔を見られないように下に向けると、視界の端に彼女の爪先を捉えて少しドキリとした。
無言。
怒っているのだろうか?
気安く・・・モデルな彼女に触れてしまった。
どうしよう・・・・今小銭しか持ってない・・・。
「ねぇ、」
「うわぁっ・・・すみません!!今500円くらいしかっ、」
「・・・・・・・意味が分からないんだけど?」
「い、いや・・・な、なんか・・・・、触ったら・・・高そうだなって・・・・見るだけでも・・・・・金銭的な物発生しそうな・・・・」
「・・・・・・・・じゃあ、100万円」
「ええっ!?ロ・・・ローンでいいですかぁ?!」
「フッ・・・・・・ハハハッ・・アハハハハハ、」
本気で用意しなければと、焦って反応を返せば瞬時に噴き出した彼女の声が星も少ない夜空に響いて消えていく。
そして今更だけど・・・、
そんな風に笑うんですね。
自分が昨日から捉えていたのは大幅綺麗だけども無表情ばかりで、時々翠姫ちゃんに微笑む姿は見ていたけれど、こんな風に声高らかに笑う姿は初めてで。
あっ、なんか・・・・この瞬間初めて、
並んだ気がした。
崇拝するような、手の届かないような位置にいる妖精とかではなく。
隣り合って、普通に笑うただの・・・女の人。
でも相も変わらず綺麗で。
むしろ・・・この笑顔は、
「・・・・可愛いですよ、」
「・・・・ん?」
「いや・・・その、年齢とか・・・肌の事とか、やっぱり悩んじゃうんでしょうけど・・・・。
僕みたいな一般男性の個人的な意見としては・・・、
普通に綺麗で、普通に可愛くて・・・・・・それだけで・・・モデルじゃない紅さんでもいいんじゃないかな。って」
「・・・・・・」
「って、・・・なんか・・・まとまってないかも。・・・えっと、僕が言いたいのはですね・・・えっと、」
言っていて、自分が何を言いたいのか分からなくなってきた。
そして彼女の悩みには的外れな返答であった気がして。
むしろモデルじゃなくてもいい。なんて、逆に彼女の気分を害するような気が。