夫婦ですが何か?Ⅱ
結局、言い直す言葉も思いつかずしどろもどろの視線は泳ぎまくった末、
「す・・・すみません」
「・・・・何で謝ってるの?」
「い・・・いやぁ、なんか・・・・すみません」
「・・・・今言ったことが嘘って事?」
「ち、違っ・・・その、本心からそう感じて!でも・・・そのモデルに誇りを持ってる紅さんには・・その・・・失言だったかなぁ?って・・・」
「・・・・」
そう、それを誇りにしている彼女に普通だとか・・・全然褒め言葉じゃないじゃないか。
ああ、本当に・・・・馬鹿でダメな男かもしれない。
思わず視線を足元に逃がして、失笑を漏らすと溜め息をつく。
やっぱりリアルな女生とのやり取りはゲームみたいに生易しくないと痛感した瞬間。
「っ・・・」
スッと頬に絡んできた白く華奢な指先。
華奢に見えたその指先が、下を向いていた俺の顔をグイッと強引に上に向けて。
驚愕のまま絡んだ目に表情に呑まれた。
うわぁ・・・、凄艶・・・ってやつ?
「・・・・普通に・・・可愛い?」
「っ・・・すみません。その、あの・・・気分を害したなら訂正します!取り下げまーー」
「ダメ、」
「っ・・・」
「嬉しかったから・・・・・ダメ、」
「・・・・・えっと・・・はい、」
絡んだのは、本来は白い頬を少し紅潮させた彼女のはにかむような笑み。
そんな表情には綺麗より早く可愛いがきて、うっかりその顔に、言葉に呑まれて空返事。
だけども、
やっぱり・・・、
「うん、・・・・やっぱり・・・訂正も取り下げもしないです。・・・・・・紅さんも普通に可愛い。・・・と、俺の中では結論が出ました」
「フッハハハ、・・・うん、うん、・・・・・・普通・・か。
『可愛い』も『普通』も・・・・言われなれてなくて・・新鮮」
「えっと・・・怒ってないですか?」
「うん・・・、なんかちょっとね・・・・気持ちが軽くなった、・・・・・・・いつもは、・・・・茜が軽くしてくれてたんだけど、」
「ああ・・・、」
「でも・・・・、もう弟卒業宣言されちゃったから。・・・・あの子も、気がついたら大人で・・・もう、旦那様で父親で・・・・私の知らない部分だらけで、」
少し・・・その気持ちは分かる。
分かるって・・・言えちゃう気がします。