夫婦ですが何か?Ⅱ
疑問顔で振り返った彼を腕を組んで玄関から見つめ、スッと目を細めると口を開く。
「ちょっと・・・両腕上げてみてください」
「はっ?何で?」
「いいから、」
一体どんな要求だ?そんな困惑顔で緩々と両手を上げて私を見つめてくる姿に。
ジッと真顔で見つめてからフッと口元に弧を描く。
「なんか・・・いい眺めですね」
「はっ?」
「こう・・・服従されてているような優越感に浸れて」
「っ・・・S・・。ってか、そんな優越感得るためにこんな風にひきとーーー」
ーーーめる筈、無いでしょう?
驚愕の声高らかに響かせた彼の言葉を最後までは聞き入れず、素早くその腕を彼の細身に巻きつけ密着する。
直後の彼の動揺露わな唾を飲む音に口元の弧が強まり、速くなる鼓動にこの場面での優位を感じる。
「・・・・こ、これは・・・何でしょうか?」
「・・・譲歩しようかと、」
「譲歩?」
何の?
そんな眼差しで眉尻下げて見下ろしてくる彼をじっと見上げ、困惑で空(くう)に留まっていた腕を自分の体に回して抱きしめさせた。
誘導すればそこは彼。
その手が触れる時には自分の意思で私の体を柔らかな力で抱きしめて。
でも表情はまだ半信半疑。
私の行動と言動の意図を探って揺れ動くグリーンアイは好奇心に満ちた翠姫の物と類似する。
「この腕の中でだけなら、」
「ん?何?」
「あなたの腕の中でだけ有効なら・・人権捨ててもいいですよ」
「・・・・・・ああ、ははっ・・・さっきの話か」
ようやく意図を理解した彼が困ったように微笑んで見下ろし頬をくすぐってくる。
感情ただ漏れね・・・ダーリン。
私が愛おしくて可愛くて仕方がないって・・・言い切れないって下がった眉尻と揺れるグリーンアイで嫌ってほど伝わるわ。
「・・・・俺の物で・・・いてくれるの?」
「・・・私へ・・・その信頼崩さぬままの夫でいてくれるというのなら、」
「・・・信頼?」
「ありきたりだけども・・・穏やかで、休まって・・・私なりに【幸せな生活】ってやつを満喫していると思うのですよ」
「うん・・・」
「この平穏無事な日常を私は崩したくもないし、過去のように心乱すような事態も追体験なんてしたくない」
「・・・・うん、」
「・・・・信頼しているのですよ。今は・・・【夫】として」
過去とは違い確実に夫婦として、妻として、夫であると認め信頼している。
もう二度と・・・それが崩れるような事態は嫌だ。