夫婦ですが何か?Ⅱ
笑って、幸せそうなら、これで良かったんだと諦める方に自分もベクトルを向けられるから。
なのに、辛そうに泣かれてると馬鹿みたいに隙を探す嫌な自分が期待するから。
だから・・・
「早く・・・仲直りすればいい・・・・」
「ん?」
「いえ、・・・独り言です」
彼女の疑問の響きにようやく涙を拭って口の端をあげて見せる。
長い間大の大人が2人して路上でしゃがみ込んで何をしているのか。
不意にそんな理性が回帰して、苦笑いでその身を立ち上げると背伸びして。
ふわりと風に煽られた瞬間に思いだす。
「・・・・背中が気持ち悪い・・・・」
「あっ・・・・ごめん。でも・・・・急に飛び出してくるから、」
「一応・・・・それなりに男見せて助け出そうかと・・・」
「私・・・これでも武術に長けてるのよ?」
「そ、そうなんですか・・・・、なんか・・・ますますカッコ悪いなぁ・・僕」
結果的に自分が身を挺さなくとも彼女は自分で身を守れたという事実に、背中の不快感が更に強烈に惨めに感じる。
本当、ついてない日だ。
深く溜め息をついて失意を逃して、さすがに帰路につくべきかとその身を返したのに。
「・・・・・えっと、」
すぐにその違和感に気がついて再びくるりと身を返し視線を落とす。
「あの・・・紅さん?・・・戻らないんですか?」
「ううん、戻るよ。・・・・茜もそろそろ私の不在に気がついて焦ってると思うし」
「む、無断で外出を?」
「別に断る必要ないでしょ?私は茜の彼女でも妻でもないもの、」
「は、はぁ・・・まぁ、」
「・・・・・」
「・・・・・あの、」
「・・・・何?」
「帰らないんですか?」
再度の確認。
一度目の確認時と同じ疑問を胸に。
だって、帰る意思はあるらしいのに、彼女ときたらしゃがみこんだまま立ち上がる事もなくその場に留まっているものだから。
一体どういう意図のそれなのかと挙動不審に見下ろしていれば。
「・・・・しゃがんでて疲れた」
「っ・・えっと、・・その・・・すみません」
「また謝ってる・・・・」
「すみません・・・・」
「疲れた!」
「えっと、その・・・」
ヤバい・・・選択肢が分からない。
彼女の上に二択でいいから項目が出ないだろうか?
そんな馬鹿な事を思いながらただ視線だけをフワフワと泳がせて。