夫婦ですが何か?Ⅱ





そうこうしている内に『はぁっ』っと大き目な息を吐きだした彼女がスッと立ち上がり自分の横をすり抜けていく。


えっ、なんか・・・怒った?怒ってる?


リ、リアル女子分からない・・・・。


何だか無表情にも苛立ちを垣間見た彼女の後ろ姿を焦りながら視線で追って。


何がそんなに反感を買ったのかと真剣に悩んで頭痛がする。


さっきまで笑っていたかと思えば・・・・女子恐い・・・。


それでも遠慮がちに背後まで距離を縮めて、僅かに前を歩く彼女の姿を見つめて。


長い髪が歩いている振動と、ゆるく流れる風に時々遊ばれて。


髪の隙間から時々覗く首が細く白く綺麗だと感じる。



綺麗・・・だな。



「・・・・っ・・」


「・・・・・・・あ、」


「・・・・・」


「っーーーーーーすっ、すみませんっ!!なんかっ・・・何かっ・・・ちょっ・・ちょっと・・・うなじに誘惑されて魔がさしたっていうかっ・・・・・ごめんなさい!!」



なんかさっきも似たような事・・・あったのに。


殆ど無意識。


前を歩く彼女の時々見える首筋に見惚れて、それに惹かれるように指先を伸ばしてそっと触れて。


言い訳をすれば、ほんの軽い、トンッと指先が触れるような接触。


それでも触ったという事実は否めず、更に怪訝な表情で触られた部分を抑えながら振り返った彼女に気圧される。


ヤバい、今度こそ多額の慰謝料請求される。


そんな事が脳裏に浮かび、さっきとは違う動悸に満ちて彼女のさすような視線に耐えていると。



「・・・・たっくんって・・・積極的なのか、消極的なのか、鈍感なのか分からない、」


「え、えっと・・・多分、後者の2つは当てはまるかと、」


「・・・・今私に触ったのはどの分類?」


「・・・・・・・魔が差したという・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・新手の手管」


「えっ?」


「・・・・・いいや、」


「えっ?えっ?」




ダメだ、全然言わんとしてる事が分からない。


しかも分からないまま彼女の方が何かを締めようとしている。


軽く混乱して彼女の発言を待ってしまう。


まったく理解の範疇を超える彼女の言動行動に困惑してどの位経ったのか。




「引き起こす、」


「っ・・えっ?」


「引き起こすって選択肢は浮かばないのに、歩いてる女の人の背後から痴漢するって選択肢はあるのね」


「っ・・・・ええっ!?ち、痴漢!?」


「私の肌に触った。許可なく触った。・・・・痴漢よね?」


「っ・・・・ち、痴漢・・かも・・です」



軽く泣きたくなってくるようなレッテル。


どうやら僕は痴漢らしいです。


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