夫婦ですが何か?Ⅱ






ーーーーMORNINGーーーー





Side 千麻




フッとその目に光を通す。


それでも一度で開ききらない目蓋を一度下して、またゆっくりとあけていく。


ぼやける視界に捉える物でも、そこが住み慣れた自宅でない事を理解して。


ぼんやりと記憶を遡って拓篤の部屋の寝室だと判断が追い付く。


翠姫の様子を伺いに来て、うっかりそのまま眠ってしまったのだと思いだして。


意識的ではないにしても家主のベッドを取ってしまったと若干の罪悪感。


そもそも・・・家主は帰宅したのか?


そんな疑問を抱きながら視線を扉に向けていき、どこか覚めやらぬ頭でしばらく不動で起動を待つ。



「あっ・・・そっか、」



ぼんやりと壁を見つめていたけれど、不意に自分を眠りから引き起こした存在を思いだして。


近くに落ちていた眼鏡をかけると携帯を探す。


バイブの振動で揺り起こされた自分、短く振動を終えたそれはメールだったのだと思う。


すぐに見つかった携帯を手に、チラリとカーテンの引かれた窓に視線を走らせて。


隙間から零れる光ですでに日は登っていると理解。


そして待ち受けを表示すれば早朝。


だとしたらこんな時間にメールをよこすのは非常識な彼しかいない。


メールを開くより早くその結論に至って、そんな瞬間にグッと胃に負担がかかる。


ああ、・・・・アレルギー絶好調かしら。


一晩開けても健在な倦怠感に失笑して、それでも重要な事かとメールを開いて内容確認。


倦怠感を堪えて、まさに彼からのメールを表示させれば。




Title 
From 副社長
ーーーーーーーーーーーーー

おはよう、千麻ちゃん。



ーーーーーーーーーーーーー




「・・・・・・」



一瞬、『あっ、さすがにそろそろ宛名を変えよう』と思考を逃がして、それでもやはり突っ込まざるを得なかったそれに一言。




「・・・・・・・だから・・・何?」




特に何の用事も記入されていないメールの内容はただの挨拶の言葉で。


これだけの為に起こされたのかと不愉快に息を吐いた。



< 484 / 574 >

この作品をシェア

pagetop