夫婦ですが何か?Ⅱ



ああ、・・・軽く気持ち悪い。


昨日ほどではないにしても継続する不快癇に眉根を寄せて、一刻も早く引く様に念じて不動でいれば。


また・・・。


再度手の近くで鳴った携帯にピクリと眉根が一番に反応。


そしてメールの相手は言わずもがなだろう。


だからこそ舌打ちをしてから再度携帯を持ちあげて、興味なく画面を開けば更に不愉快に眉根を寄せた。



【今日はね、晴れらしいよ】



「だから・・・何なのよ?さっきから・・・・」



天気が晴れだろうがこっちの心中は未だ真っ黒で分厚い曇り空だっていうの!!


そんな事を心でぼやいてゆっくりとその身を動かして行く。


こんな風に苛立っても、教えられた天気を確認するように窓に寄って。


カーテンを軽く開いて外を伺えば、気分とは違って青々とした晴天の空をその目に捉えて。



「確かに・・・・いい天気だわ、」



ぽつりと零した感想に、不意に彼のメールの言葉に返答している気がして苦笑い。


結局、彼の意図の分からない遊びに巻き込まれている。


そんな自分に呆れながらも、今度は自分の身で体感しようと窓のカギを開けて外のテラスに足をつけた。


ふわりと煽ってくる初夏の風は心地いい。


その風によって不快感も流され消えそうな。


しばらくその身を風に晒して、それでもやはり微々たる不快感に眉を寄せると水分補給を求めて部屋に戻った。


まだ眠っている翠姫を起こさないように寝室を横切って、そっとリビングにその身を移せば、家主である拓篤がソファーで眠っているという場面。


ああ、ごめんなさい。


そんな事を思いながら静かにキッチンに入ると、冷蔵庫を開けて炭酸水を手に壁に寄りかかった。


音を極力立てぬように開栓して、すぐにごくりとそれを煽って。


横目でキッチンを見つめながらぼんやりと頭で思うのは。


今日もまた、まさに今・・・・



「・・・・・食べてるのかしらね」



紅さんの作った食事を。


瞬時に思いだされる昨日の朝の記憶。


嬉しそうに、楽しそうに、美味しそうに・・・・。


彼が彼女のスープに満足して笑っていたのを思いだす。


あの味も。



「っ・・・・」



ああ、もう・・・・・


いっそ、死にたいくらいに気持ち悪い。


思い返した彼になのかスープの味になのか、


不意に強烈になった不快感に口元を覆って。


下手したら吐きそうなそれを必死に堪えて蹲る。


いっそ・・・吐いた方が楽なんだろうか?



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