夫婦ですが何か?Ⅱ




いざ、気分を変えて一宿一飯の為に朝食を。


そんな意気込みであったのに、再びバイブ音響かせた携帯にうっかり舌打ち響かせる。


何故か拓篤がその響きにビクリと反応し怯んで見せて。



「大丈夫、拓篤じゃなくてしつこいストーカーにキレただけだから」


「あっ、えっ?せ、茜君?見なくても分かっちゃうの?」


「さっきから連発だしね」



間違いなくその相手は彼だと言いきって操作し、宣言通りの表示を確認するとその疑惑は外れない。


でも、



【翠姫、そろそろ起きるんじゃない?】



そんな一言の文面を目に映しこんだ直後に、本当に寝室から響く翠姫の泣き声に目を丸くした。


どんなエスパーだよ。と心で突っ込み寝室に向かう。


泣いている翠姫を抱え上げて、宥めながらリビングに戻ると拓篤がコーヒーのフィルターをセットしている場面で。



「私がするのに、」


「えっ?別にいいよぉ。僕の部屋だし・・・・借家だけど。千麻はお客様でしょ?」


「居候でしょ?」


「でも、体調不良だし」


「これは単なるアレルギー症状だから」



大病患う患者じゃあるまいし、逆に動いている方が気分転換になりそうな。


だからこそ落ち着いた翠姫をリビングに下ろすと、すぐにキッチンに舞い戻って冷蔵庫を開ける。


その瞬間に捉えたビール缶で、不意に昨日の拓篤の矛盾を思いだして思案して。


迷った末に軽く遠回しにその言葉を口にした。



「ねぇ、・・・昨日はコンビニ行っただけなのに・・・遅かったわね」



帰りにくかったの?


そんな含みで言葉を弾くと、ゆっくり拓篤の方へ視線を動かした直後。



「・・・・何?・・どうしたの?」


「・・・・・千麻、・・・僕、・・・犯罪者かもしれないんだ・・・」


「はぁっ?万引きでもしたとか言うわけ?」


「・・・・・いや・・・痴漢、」


「っ・・・」


「慰謝料とか請求されそうで・・・・」


「ウソでしょ!?」


「・・・近々仕返しされるらしいんだよ・・・」



絶句。


もっとセンチメンタルな理由で帰宅の遅延かと思い言葉を弾いたのに、まさか・・・。


予想もしない返答が返ってきた。


ってか、そう説明されてもまったく想像がつかないんですけど。


でも、分かるのは。


拓篤が私に負けず劣らず青ざめた顔をしているという事。


< 487 / 574 >

この作品をシェア

pagetop