夫婦ですが何か?Ⅱ




ようやく言わんとしたいことを理解して納得、同時に軽く息を吐くとさっきも不快感であった予想出来る現状を口にして。



「大丈夫よ」


「えっ?」


「私がいなくても・・・・・・・、っ・・紅さんも料理上手だし」



嫌味な言い方になってしまっていただろうか。


言い終わって、やはり強まった不快感と、自分の性格の悪さに嫌悪して。


それでも表情を崩せば拓篤に不安が移行すると、必死に無表情を保ってその場に留まり。


それでも上げきれなかった視線が床に落ちた。


私がいなくても・・・・今頃、紅さんの朝ごはんで笑顔を浮かべているでしょう。




「・・・・えっと、・・・千麻?」


「だから、私があっちに行く必要はないのよ」


「で、でも、その・・ね、」


「あ、待って、またストーカーメールだから」



何かフォローを口にしようとした拓篤に、いや、そのフォローの言葉にうんざりしそうで。


そのタイミングに都合よく携帯が響いた事に、今この瞬間は感謝して。


でも、そのメールの相手も身体的には私に害なす存在だと複雑に口の端をあげる。


そしてまた・・・。


他愛のないメールなんでしょ?




【いってきます】




ほら、


他愛のない・・・一言。


そんなに、


そんなに自己主張したいの?・・・ダーリン。


当たり前に時間は動いて。


私がいなくとも彼はこうして時間通りに当たり前に出勤するのだ。


紅さんの食事に満たされて、きっと、昨夜も思い出話に花でも咲いていたんじゃないの?


あのベッドでも、私がいなくとも寂しい感情なく普通に眠って起きたんじゃないの?


ああ、どうせ、


どうせね、朝からこんな自己主張なメールをしてくるなら、


むしろ・・・昨日の夜に、



『一人じゃ眠れない・・・』



そんな一言が欲しかった。


なんて・・・。


自分勝手で我儘な感情だ。




「千麻?」


「・・・・ごめん。何でもない」



馬鹿で見え透いた強がり。


強がりだと示すように頬に伝った涙が証拠で、それを捉えたから拓篤も不安げに私に声をかけたのだから。


結果何も変わらない自分の負の感情に、ムキになって掻き消すように涙を拭って。


気持ち悪い・・・。


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