夫婦ですが何か?Ⅱ
「あなたの腕の中でなら従順になりましょうとも。あなたが与えてくれる安堵と信頼を引き換えに・・・。
その条件でいかがでしょう?」
払える?
そんな試すような視線で首を傾げて見上げて微笑むと、一瞬だけ緑を動揺に揺らした彼がすぐにその揺れを止めるとニッと強気に微笑んでかがむ。
唇が触れ合ったのは必然。
ああ、本当・・・、
馬鹿らしいほどのおしどり夫婦だ。
でも・・・
「最高です」
声を響かせたのは彼の方で、しっとりと密着させていた唇を離し、それでも話せば掠めるほどの距離で言葉を落として。
「俺・・・・最高に幸せなんだけど?・・・どうしてくれるのさ?仕事どころじゃないよ・・・千麻ちゃん」
「・・・・お金を稼がない人は信頼対象から速攻で外れーー」
「稼いできまっす!」
パッと離れた体と、言葉の信用度高めるためなのかこれ見よがしな敬礼示す彼に片手をあげる。
『いってらっしゃい』の意味で。
それを理解して彼も玄関に手をかけると最後の確認とばかりに振り返って微笑みようやくその身を外に出した。
騒がしき朝の終幕。
パタリと閉まる扉の音と薄暗くなった玄関を見つめ、やはり疼く葛藤に苦笑いを浮かべてリビングに足を向けた。
足りない。
彼を理解し隣り合うのは、
それに一番選ばれるべきは私。
家でも・・・仕事でも。
早く復帰しなければ。
そんな焦燥感にも似た感情でPCの電源を入れると、おもちゃに夢中な翠姫を微笑ましく見つめてから今のメインの仕事である家事に手を伸ばした。
再婚夫婦の安定した幸せの日々。
少なくともこの時点では。