夫婦ですが何か?Ⅱ
突発的。
意思の不在で後先考えずな行動。
だから、何をしたいのか、何を求めてかも分からないまま駆けだして。
自分の改善していない不調や、それによってどうなるかも考えずに玄関扉を抜けた。
向かったのは隣の部屋じゃない。
気がついていたから。
気がついたから。
さっきのメールの内容やタイミングは全て・・・。
だから今はきっと。
部屋とは真逆にその身を出して、つんのめりながらエレベーターホールに向かう。
間に合うだろうか?
エレベーターのタイミングが合えばまだ。
淡すぎる期待をかけてその場所を視界に捉えて、まさに閉まろうとしている扉に焦燥感働く。
でも捉えた姿に一瞬思考を奪われた。
馬鹿、
「っ・・・いってらっしゃい!!」
「っ・・・」
馬鹿だ、
馬鹿で、
そんな馬鹿な部分が嫌いじゃないと思う自分が嫌いです。
間に合わないと判断すると、せめてその声だけは間に合わせようと響かせた。
気がついた彼が扉が閉まりきる前に私を捉えて口元に弧を浮かべる。
そして軽く上がった片手を捉えた直後に閉まった扉。
数字の点灯が下降していくのを軽く息を切らして見つめ、思いだした姿に思わず失笑。
「馬鹿ね・・・ダーリン」
どこに、サングラスとパーカー姿で出勤するサラリーマンがいるのよ。
無効なのに。
私の前に立つわけでもないのに。
リハビリスタイルでいる必要なんてないのに。
まるで昔の雛華さんの様でーーー
「・・・・・」
フッと、口元の笑みが消える。
何の気なしに思いだした対象を引き合いに出しただけなのに、その引用で彼の意図にも気がついてしまって。
ああ、そうか、
リハビリじゃない。
私の不調の為じゃない。
でも・・・・、
私の為のそれだ。
私の我儘の、
「別に、本気で再現を求めていたわけじゃないのに、」
『私以外に・・・・見せてほしくない。見られたくない・・・』
そんな我儘への返答であり、
今彼が出来得る私への愛情表現という事なのか。