夫婦ですが何か?Ⅱ
一生、
自分とこの男の恋愛観は合わないと思う。
そんな再確認をするようにサングラスのトーンの濃いガラス越しに嫌味に微笑む男を見つめ。
また何か嫌味が吐きだされる前にその身を動かし、でも、すぐに思いだした事でその男をまっすぐに見つめ返すと。
「・・・何ですか?すみませんが俺はそっちの気はありませんが?」
「俺があるように言うなよ。一度だって男相手にそんな視線送った事ねぇよ」
「では・・・・・、こんな【腹の立つ男】に何か確認したい事でもおありでしたか?」
にっこりと笑った男の底意地の悪さ。
絶対に問われる内容を確信して言葉を返してきていて、それが分かるから言いかけた言葉も引き下げたいような。
でも、
「前に・・・」
「はい?」
「その・・・・何か、千麻ちゃんを理解したような事言ってただろ?」
「・・・・・あなたにとっては悲報かもしれませんが、千麻の事なら嫌って程細部に渡ってまで知っていますが?」
「っ・・・殺してぇ・・・」
「では、待ってください。今手帳に犯人を示すダイイングメッセージを、」
それを俺に言ってどうするんだよ。
一瞬そんな切り返しをしようかと思い口を開き、それでも話題が逸れていく一方だと判断が追い付き何とか飲みこんだ。
この男と漫才してどうする俺。
冷静になれ。と言い聞かせてから息を吐き、再度仕切り直して言葉を弾く。
「真面目に・・・・・あのヒントの答えが分からないんだよ」
「・・・・・珍しい。あなたともあろう人が降参するのですか?」
皮肉なのか。
意地の悪い笑みで痛いところを突いてくる男に睨みを返そうか?
でも、そうじゃなくて。
今はつまらないそれは不要。
「プライドより・・・・千麻ちゃんが大切なだけ・・・」
そう、つまらない自分の意地やプライドなんかより、千麻ちゃんの回復が何よりも大切。
ありのままの千麻ちゃんと、あの家で、当たり前な日々を紡いでいきたいんだ。
だから、いくらでもプライド捨てて、気に食わないこいつにだって縋ってみれる。