夫婦ですが何か?Ⅱ
そして『馬鹿にしないで』と思っていても、彼は絶対に馬鹿にしない事をどこかで知っている。
それどころかこんな安い言葉にきっと・・・。
応えるように濃密なキスで返されて、しばらく呼吸を共有してからゆっくりまともな酸素を得る。
同時に絡んだグリーンアイの優しい事・・・。
念を押すように再度しっとりと重なりチュッと音を立てて余韻たっぷりに離れた唇。
まだ掠める距離で響いた声は、
「・・・・・全部・・・俺のだよ、」
これもまた・・・安いセリフ。
でも馬鹿にしたりしない。
言葉を示すように私の髪を指先で絡め取って唇で触れる姿をじっと見つめ、指先が私の肌を滑るのに感じて目を細めて息を吐く。
「全部・・・・・俺だけが触っていいんだよ・・・」
「・・・・・違います」
ようやくここで反論の声を響かせれば、少しばかり目を大きくした彼の確かめるような視線に口の端をあげて見せると。
「翠姫も・・・・」
「ふふっ・・・翠姫は勿論。・・・・でも・・・他の奴はダメ、」
「誰も、キチガイなあなた以外・・・・私を欲したりしないですよ・・・・」
あり得ないと小馬鹿に笑ったつもりだった。
なのに絡んだグリーンアイは困ったように方眉を下げ呆れたような声音で牽制。
「無自覚は罪」
「・・・・・・・何?」
「千麻ちゃんは・・・・攫って閉じ込めてしまいたいくらい綺麗で魅力的だって自覚した方がいい」
「・・・・・・馬鹿ですね。・・・さすがにクサすぎます」
まっすぐにどこか真剣な眼差しで見下ろして言ってきた彼を一笑すると鼻を摘まんだ。
さすがに過大評価しすぎだと。
なのに私の反応に彼はふざけたようには笑わない。
ただ、仕方ないと言いたげに眉尻下げて微笑んで、ゆっくりと重なってきたキスは激しさなく愛でるような密着。
「本当だよ・・・・」
念を押すようにささやかれた言葉。
もういい。と自ら彼の唇を塞ぐと、今度は逆だと体を起こし彼をゆっくり押し倒した。
視点の切り替え。
今まで見上げていた姿を見下ろして、本来他の女が望んでもそうそう得ることのできない彼の無防備な姿を捉えて口の端を上げる。