夫婦ですが何か?Ⅱ
問いかける内容を口にするより早く笑った彼が、自分の予想通りだったかと言葉でも確認。
「父さん・・・喜んでた?」
ああ、多分。
想像しておられるのでしょう?
いつもの様に全て見透かしたように悪戯に笑う黒豹の姿を。
私もそんな予想であの部屋に出向き、仕事復帰延期の叱責への懸念は微々たる物。
・・・だったのですが。
「・・・・・怒られました」
「はっ!?何で?あっ、無責任とか!?『復帰する予定だったのに何してんだ!』とか?」
「・・・・・・言った直後に真顔で、『何で一番に知らせにこない?』と、」
「・・・・それ、・・・本気で言ってるのかな?」
「私も判断に迷って久々に社長を前に変に緊張しました」
思い出してもあの瞬間のあの言葉は、本気なのか冗談なのか判断がつかず。
微妙な表情で彼の問いに答えると、聞き入れた彼も判断つかずの苦笑い。
いや、そうですよね。
「もし、本気で言ってるならさ。一番に報告されると思ってるところが微笑ましいとフォローしておく。・・・身内だし」
「かなり苦しいフォローですが。でも、まぁすぐに満面の笑みでお祖父ちゃんな顔をしてましたので・・・そういう事にしておきましょうか」
「舅の狂言失礼しました」
「上司であった頃のセクハラに比べたら可愛い物です」
そう言いきればこれまた別の意味で苦笑いを浮かべた彼は、多分自分にも後ろめたい記憶のそれだろう。
だからクスリと意地悪に口の端をあげると、昼間の内に作っておいた筑前煮を皿に盛りつけ彼に手渡す。
「これでも摘まんで拓篤と飲んでてください」
「おおっ、うまそ。千麻ちゃんの和食は最高です」
サラッと言われた言葉の含みに気がつき、確かめるように視線を走らせれば。
そうやって私が確認してくるのを分かっていたようにニッと口の端をあげた彼。
しっかりと応用。
いや、今までだってこうやってはっきり言ってくれていたのに、私がそれに気付くのが遅かっただけ。
行儀悪くもビールを飲みながらリビング側に回った彼が拓篤と肩を並べて座って飲み始め。
対面するキッチンで紅さんと一緒にその他の調理に取り掛かる。