夫婦ですが何か?Ⅱ
そんなタイミングに部屋にチャイム音が響き、エントランスからのそれじゃない来訪者は限られて予測される。
すぐにキッチンから出ようと身を動かしたのに、スッと横切って廊下に身を進めた彼が片手を私に示めしてその場に留めた。
それに意を申す気もなく、すぐに身を戻すと玄関扉の開閉音。
微かに聞こえる話し声からして来訪者は、
「いたいた。拓篤さん、部屋にもいないし携帯にもでないんだから」
「孝太郎・・・あ、ごめんね。携帯部屋に置きっぱなしだ」
「・・・・携帯を携帯しないきゃただの家電じゃん」
「あはは、うん、充電切れそうだったから・・・」
部屋に入るなり呆れ顔で声を響かせたのは、最近再再婚を成し遂げた男・榊で。
どうやら我が家にというよりは拓篤に用事があったのだと会話で理解。
それでも来客だと冷えたビールをグラスにあけ、榊に差し出せば『ども、』と言葉短く感謝を口にし拓篤の隣に腰を下ろした。
「で?どうしたの?家賃ならもう払ったよね?」
「人を取り立て屋みたいに言わないでよ。そうじゃなくて、・・・・いや、半分はそうかな、」
「ええっ?まさか家賃値上がりとか言わないよね!?」
「・・・・そういう意味にもなるかな」
「か、勘弁してよ。特価で良い部屋住みたくない?とか言うから話に乗ったのに・・・住んでから詐欺!?」
「まぁ、こっちも予想外の諸事情あって、」
そんなやり取りを作業を続けながら聞き入れて、家賃の値上げ発言に拓篤が落胆するのに苦笑い。
でも、まぁ、確かに。
「住んで早々に値上げとは、・・・確かに提示された前条件と不一致に詐欺と言われてもおかしくないですよ」
さらりと庇うように榊に告げれば、拓篤が救いの女神でも見つけたかのように縋った眼差しをこちらに向ける。
「・・・前条件と金額を変えなくてもいいんだけどさ」
「はあ、つまりは何が言いたいんですか?」
「月々の家賃をローンにしないかって提案です」
「・・・・・はっ?」
さらりとその言葉を述べ自分のペースでビールを飲む男。
それを囲む私と拓篤と彼は同時に同じような疑問顔を浮かべ、榊が程々に喉を潤しグラスから口を離した直後。