夫婦ですが何か?Ⅱ





だからこそ私も気迫負けして道をあけたのだけども。



「・・・紅、・・・いい歳して他所に迷惑かけるな、」


「別に・・・かけてない」


「・・・今現在、茜や彼女にかけているだろう?お前の天然な我儘はいつだって揉め事のタネになるんだから、そしてそれを刈り取る俺や翠や碧の苦労を汲んでくれよ」



深い溜め息と一緒に弾かれた言葉に、彼と一緒に複雑な苦笑いを浮かべて。


頭に浮かんだ言葉も同じだろう。


『まったく』だと。


まさにそのタネによって見る見る揉め事が広がっていたこの数日。


だからこそ飛び火が来ないように極力紅さんとは視線絡まぬように成行きだけを追っていく。



「そろそろいいだろう?これを気に日本にも戻ってこい」


「・・・・・日本には戻る。・・でも、家には帰らないわよ」


「紅・・・」


「だってもう住む場所見つけてあるし」



えっ?


そうなの?


そんな表情で同時に彼と私の視線が紅さんに集中して、そんな紅さんがスッと身を動かしカウンターに寄る。


それによって放置しっぱなしだった拓篤と榊の姿が視界に入って思いだし。


マンション問題はどうなったのだろうと意識が散漫になりかけた頭に。



「私、彼の家に住むから」



紅さんの躊躇いのない一言に全員が沈黙し、多分全員が頭の機械がパンクしてまともな思考が出来ずにいたのだと思う。


私も必死に言葉と示された物の接続を試みて、でもいち早く回復したらしい姿がその声を響かせた。



「えっ・・・・・彼って・・・僕?」



違うよね?


そんな確認を下手くそな作り笑いで自分を指さしたであろう拓篤。


でも、そんな拓篤に女神の微笑みで非情を告げた紅さん。




「同棲って・・・ドキドキする響きでしょ?・・・たっくん」


「っーーーー!!ちょ、ちょっと、ちょっと待って!!いやっ、いやいやいや、無理っ!無理だから!!」


「・・・・・・私が嫌いなの?」


「ちっ、違っ・・・好きだけど、・・っ・・あ、違う、違うからっ、そういう好きじゃないからね!」



うん、拓篤。


突然の爆弾の処理に相当焦っているのは理解するし同情もするけど、私に言い訳するように『好き』の説明しなくていいのよ?



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