夫婦ですが何か?Ⅱ
何故か私にその理解を求めて視線を逃し、それでも逃がさないとばかりに拓篤の頬に紅さんの指先が触れ誘導。
しっかりその視線が絡むように、そして捉えた物を逃さないような微笑みは恐い。
むしろ、さっきの榊の執拗さなんて可愛い物だ。
「べ、紅さん・・・その、無理です」
「今・・・好きだって言ったでしょ?」
「そ、その・・・同棲とか関係する好きとは違ってですね。・・・というか・・・僕たちの間にそんな色めいた瞬間は微塵もなかったかと・・・」
「ルームシェアなんて今時普通でしょ?」
「ぼ、僕は・・・その、世の中にオープンな人間じゃないんで、一人で閉じこもってるのがいいって言うか・・・、オタクだし・・・」
「・・・・・・・・・・分かった」
「あっ・・・・・本当ですか?」
おお、案外早々に騒ぎの収拾か?
そんな紅さんの潔さに拓篤も安堵の息を吐いた直後、紅さんの視線が拓篤の隣で自ペースで飲んでいた榊に移って。
「全額キャッシュであの部屋買うわ」
「・・・・まいどあり。ご購入ありがとうございます」
「えええええ!!僕住んでるのに!?現住人を無視して売買!?いきなり家無し生活!?」
「・・・・馬鹿ね、物は考え様でしょ?私がルームシェア代としてあなたに払う代わりに大元の相手に払っただけの事
一石二鳥でしょ?あなたは今後お金の心配はなく、ただ私をあの部屋に住まわせてくれればいいだけ」
「それって・・・逆に僕が居候なんじゃ?ってか、あの部屋気にいって住みたいなら紅さんに譲るから一人でーーー」
「ダメ。・・・私はあなた込であの部屋を買ったのよ」
「人身売買!?ってか、僕ってマンスリーな家具付きアパートの家具と同等!?」
思わず拓篤の引用に噴きだして、すぐに失態だと口元を隠した。
でもその例えがおかしいわよ拓篤。
完全に紅さんの言い分に押され続け、今にも防波堤が崩壊しそうな拓篤の姿に同情はする。
ここを譲ったら・・・・今後の生活大変そうだな。
この数日で体感した彼女の存在感は強烈で、あまり好意的には捉えられないから拓篤の身も案じる。
そして拓篤もさすがにその予測ついてか、何とか必死に最後の砦を薄い板で守っているような。