夫婦ですが何か?Ⅱ
「千麻ちゃんと紅ちゃんが似てるなんて誰が言ったの?」
「・・・・・・・・・・へっ?」
いや、
誰も言って無いんですが・・・なんとなく。
自分では確実に彼がその感覚でいると思っていたものだから、逆に切り返しに驚かされる。
だって、
めちゃくちゃ驚いた顔で『何言ってんの?!』全開だし。
逆に・・・、そこまで驚いた反応されると・・・・間違いを正解だと自信を持っていただけに・・・恥ずかしい。
「えっと・・・・あの、」
「うわぁ、気付けないはずだよぉ・・・超盲点。紅ちゃんと千麻ちゃんが似てるなんて微塵も思ったことないし。むしろ全然似てないんですけど?」
「っ・・・そ、そうです・・か」
「そこかぁ・・・、あ~・・・もう、なんか・・・本当に無駄に空回ってすれ違ってたって気がしてきた」
「っ・・・す、すみません」
「そんな所とはねぇ」
「・・・・」
「だいたい、容姿からすでに千麻ちゃんと紅ちゃんは全然違ーー」
「だから分かりましたって!!私の勘違いでいいじゃないですか!?」
「っ・・・千麻ちゃん?」
噴火で爆発。
羞恥と、それを無自覚にも追いこんでくる彼の言葉攻めによって。
言われれば言われるほど自分の抱いていた葛藤に羞恥して。
自分でもなんて無駄な空回りなんだと理解するから余計に羞恥で苛立って。
こっちも馬鹿だったって認めての回答なんだから執拗に食い下がって反応するなっての!!
「勘違いで被害妄想で勝手にヤキモキしてましたよ!!」
「ちょっ、ちょっと落ち着こう。胎教にも悪いし・・・」
「容姿も異なって足元も及ばない紅さんに劣等感抱いて空回りなすれ違い巻き起こしてましたよ!」
「い、いや、すでに、まさに現状被害妄想・・・」
「それをグダグダ、チビチビ、追い詰めるようにぃ・・・」
「あ、あの・・・その違うんだよ?千麻ちゃん?」
「勝手に勘違いにも大事なお姉さまと自分を対比してすみませんね!!」
「ひ、被害妄想ぉ~」
軽く涙目で憤怒して言いきって、フンと鼻を鳴らすと彼に背中を向け廊下を歩きだす。
当然ひよこのようにまとわりついてきた彼が色々と弁明してご機嫌を取ろうとしている姿を見て見ぬふり。
「ね、ねっ?千麻ちゃん、今俺たちに一番適してるのは、やっと誤解が解けた上に妊娠判明してアツアツラブラブな空気だと思うんだよ!?」
「別な意味でアツアツです。残念ながらラブラブは皆無でイライラが増量中です」
「増量中って言葉でテンション上がるのはカップ麺やお菓子だけだからぁ!」
「成程。では、私の、無いとは思いますがラブラブ増量中はその対象外だと記憶しました」
「違うっ、違うんですぅ・・・、欲しい!むしろ現在進行形で千麻ちゃんの愛が欲しい!!」
「そんなん・・・再婚した時からこの家には溢れかえるほど在庫があるって気がついてないんですか?!」
「・・・・」
「追い付かなくて、在庫処理に困ってるくらいです。・・・・・邪魔なんで多少捨ててもいいでしょーーー」
ああ、もう、
私達の夫婦漫才の行き着く先は・・・・、
いつだって甘い。