夫婦ですが何か?Ⅱ
気がつけば懐かしい回想に浸って、よくここまで彼との縁が続いたとさえ思う。
でも、まだまだ・・・
これから先も、
「きっと、・・・千麻ちゃんと俺は長い付き合いになるよ」
「・・・・・えっ?」
また記憶の回想かと思った。
ついさっきもリアルに頭に浮かべた響きをさらに鮮明な響きで耳から流しこまれて。
軽く驚愕した表情で振り返って捉えた彼は、『ん?』という笑みで私を見つめ返す。
「覚えてたんですか?」
「自分の言ったことくらいはだいたいは覚えてるつもりだけど。これは千麻ちゃんと初めて会った日に言ったことだよね?」
「じゃあ、記憶の回想という意味の引用ですか?」
「うーん、まぁ、そうであってそうじゃない」
「何ですか?それ・・・」
何ともはっきりとしない返答に怪訝な表情で明確な答えを求めて見つめて。
見つめられた彼は一切形を変えない微笑みで見下ろす。
不覚にもその穏やかな雰囲気にドキリと反応し見惚れてしまったくらいに。
「懐かしむ回想でもあって・・・、今後にも応用していきたい。ずっとずっと・・・、また今回みたいにさ予測不能な揉め事もあるかもしれないけどさ、」
「・・・・・はい、」
「フッ・・・これからも何とか俺達らしく、長く長くつきあっていこうね」
「・・・・」
「とりあえず・・・千麻ちゃんの味噌汁毎日飲めるだけで俺の人生の大往生は約束されてるよね」
「・・・・・馬鹿」
呆れたように半目で見上げて、欲がないと詰る心もあるのに。
それでも、
私もね、
馬鹿みたいに共感するわ。
あなたに毎日、食事を作って、支えて、尽くして、私と言う人間を必要とされる事が、人生を振り返った時に何よりも幸せだったと言える気がする。
でもそれを振り返るにはまだまだ・・・。
本当に彼が言う様に長く長く付きあってからでないと、今までの年数以上に。
当たり前の日々を積み重ねて。
「ゴールはまだまだ・・・視界に捉えられないくらい遠いですが・・・」
「うん、」
「のんびり夫婦漫才でもしながらゆっくり目指して行きましょうか?ダーリン」
「千麻ちゃんと並んでなら、どんだけゆっくりでも構わないよ」
にっこりと笑った彼が隣に並んで、子供のように指先を絡めて手を繋いで。
そんな彼にいつもを返すのであれば嫌味な表情や言葉。
でも、今は不適切でしょう?
繋がれた手をギュッと握り返すことで同調を示して、口の端を軽く上げることで更に強調。
数秒だけお互いの繋がりの強さを見つめあう事で確認すると、放置しっぱなしの賑やかさの中にようやくその身を戻していった。
ベランダでお酒を酌み交わし
人生を回想するにはまだまだ長い・・・。