夫婦ですが何か?Ⅱ
彼を送りだして繰り返しの日々を今日も過ごす。
掃除をして洗濯物を干して、一通りの家事をこなすとコーヒーをカップに注いでPCに向かった。
彼の取り急ぎ出ない仕事を在宅でこなして、復帰した時の為に現状把握。
時々足元にじゃれてくる翠姫の相手をしながらタタタっとキーボードを打ち込んでいれば、すぐ横に放置しておいた携帯が着信を伝えて騒ぎだした。
視線は画面に置いたまま手さぐりで震えるそれを掴むと相手も確認せずに応答して耳に当てる。
「はい、」
『あっ、千麻?あんた元気にしてるの?』
入りこんだ聞きなれすぎた声音に深く溜め息を吐いたのは失態だろうか?
それとも情がない?
でも、そういうものだろう・・・・母子って。
「お母さん・・・・何か用?」
『【用?】って薄情ねぇ・・・、こっちは再婚した娘の現状に心配していつだって連絡待ってるのに。翠姫の現状すら電話してくれないんだからぁ・・・』
「・・・・今度はまともに夫婦しているし、翠姫は立って歩けるようになりました。・・・これでいい?」
面倒だとキーボードを叩きながら意識半分に要点を返せば、手に取るように分かる電話先の母の不愉快。
私とは違い感情的な女性である母は思ったことをズバズバと言うところがある。
今だって感情丸出しの口調で私の言葉短い返答にあからさまに溜め息をついてからその声を響かせ始めて。
『あんたね、茜さんと上手くやってるの?あんたみたいな面倒な子を2度も貰ってくれたんだから三つ指ついて接するくらいじゃなきゃダメなのよ?!』
「・・・・大丈夫、指じゃないけど3か所つけたから」
両手と膝を壁にね。
決してマナー的ではないけれど彼も満更じゃなさそうだったしいいでしょう。
そんな補足を頭に母親に言葉を返せば、どうやら多少は感情落ち着けてくれたらしい。
安堵したように『良かった』と口にする母に意識も半分で『良かった良かった』と相槌を打って、その視線はPCの文章や文字を必死に追っている。
母がしてくる電話は大抵こんな他愛のない状況確認ばかりで、いつだって適当に相槌打って流していたわけで。
今日も程々に満足しないかなぁ?と彼女が望むままの返答で通話を切り上げようとしていれば。