夫婦ですが何か?Ⅱ
『昨日ね、あんたに似合いそうな下着見つけたから買って送っといたから』
「うんうん・・・・・、はっ!?・・・・下着?!」
『どうせあんたの事だから飾り気もない下着つけてるんでしょ?ダメよぉ、もうあんたも若くないんだから逆に身に着ける物は若さを示していかなきゃ』
「・・・・余計なお世話だけど?何でいきなり下着なのよ?」
『勿論、茜さんの為でしょうが、』
「ねぇ、リアルに母親からそういう事されたり指摘されると頭痛いんだけど、」
『あんたはまたそんな事言ってぇ。茜さん程の方はあんたじゃなくても相手はいくらでもいるのよ?
あんた、ママがパパを捕まえて自分につなぎ止めておくのにどれだけ苦労したとーーー』
「ああ、いい。その話長いの分かってるから」
本当にいい歳して。
そんな呆れた表情と深い溜め息でようやくパソコンから視線を外して椅子に寄りかかった。
耳にタコが出来るほど聞かされた父と母のなれそめ話。
どうやら美男と言えるらしい父をその当時必死で口説いて物にしたらしい母は、未だに父と結婚したことを誇りとしているらしい。
そして若造りで今もその注目を得ようと常日頃化粧品や服や下着まで気を遣うザ・女性なのだ。
そんな母をドライに見つめていたのは私だけでなく、私の大幅の礎になった父も同じく。
無表情で母のやる事に淡々と切り返す姿に尊敬すらする物だと幼心に思った記憶も。
そしてこうやって娘が【いい男】と無事に纏まれば、同じ感覚で自分の若さの秘訣を押し付けようとする始末。
母は嫌いじゃない。
でも・・・・人種が違いすぎて困惑する。
今もその歩み寄れない感覚に頭を抱えて翠姫を見下ろして。
そんな瞬間に部屋に響いたチャイムの音。
携帯を片手にインターフォンで受け答えすれば、まさに宅配の訪問に苦笑いで声を響かせる。
「なんか・・・届いたみたいだから切るわよ?」
『ちゃんとつけるのよ!?つけたら写メ送って!』
娘の下着姿を写メで?
どんな要求だよ。
そんな問題ありな言葉を最後に厄介だった通話を終えると宅配を通す。
一体どんな奇抜な下着が届けられたやら。と小さく溜め息をつき、温くなったコーヒーで喉を潤すとPCをスリープさせて仕事の中断。
そんなタイミング計って今度は玄関のインターフォンが響き、判子を手に歩きだした。