夫婦ですが何か?Ⅱ
身を重ねても欲を求める様な動きもなく、何となくお互いの存在確認のように抱きしめあってじゃれついていたけれど。
「・・・・・花火も見ずに、私達って何してるんでしょうね?」
「夫婦仲を深めてる?」
「だいぶオブラートに包まれてませんか?」
「だって、正直あの花火以降色彩感覚おかしいもん。もうあれ以降一色だけだし、あれ以上に最高に感じない」
その目の異常を訴えるように、目の横をトントンと小突いた彼に小さく笑って。
もう余計な会話は充分だと、【夫婦仲】を深める行為に誘うように彼の首に腕を巻きつけ引き寄せる。
その誘いに軽く笑って、それでも従順に顔の距離を埋めてきた彼。
でも・・・、
私が惚れたこの人は簡単に負けてくれるお人じゃないと再確認させられる。
「皺々なお婆ちゃんになっても愛してるよ、きっと」
狡い。
そう言い返したかったのに言えなかったのは、彼がキスの直前にその言葉を落としたから。
勝ち逃げ。
ムッとして眉根を寄せても、それが彼の目に捉えられる事のない顔の距離。
それでも・・・私は分かる。
今も重なっている彼の口元は笑っているって。
ああ、それに約束ですものね。
今はあなたの腕の中だ・・・、だったら・・・。
静かに、寄せていた眉根を離していって、受け入れるように彼を抱きしめる。
愛でるような口づけがようやく酸素を取りこむように離れた瞬間。
お返ししましょうとも、
「【きっと】、皺々になったあなたも愛してます」
「・・・狡いなぁ、千麻ちゃん」
困ったような笑み。
【多分】から【きっと】の確定。
不意を突いて言い逃げて、
お互いに力なく笑うと従順に愛情の確かめ。
まだまだ、通過点。
皺も刻まれない今は若さのままに貪欲に愛し合いましょうか。