夫婦ですが何か?Ⅱ



扉を開ければ馴染みある配達人の若い男。


差出人が母である荷物を差し出してくるのを受け取って、簡単に判を押すとお決まりの謝礼を口にして走り去っていく姿。


それを程々に見送り扉もあと少しで閉まるという瞬間に激しく何かが床に落下した音と『ああっ、』と響いた聞き覚えのある声。


その響きに思わず閉まりかけていた扉を押さえ、そっと様子を伺うようにローカに顔を出せば。



「・・・・・大丈夫ですか?」



思わず響かせた声と、捉えた現状に酷く同情。


痛々しいと眉根を寄せて、隣家の前でしゃがみ込んで無残な姿になっているタブレットを拾い上げる男の姿を見つめてしまった。


疑惑鮮明な隣人。


榊だ。


声をかければスッと動いた視線が私を捉えて、見事液晶にヒビの入ったそれを示して苦笑い。



「アウトです・・・・」


「ご愁傷様です」


「まぁ・・・他にもあるしバックアップもあるので微々たる衝撃な程度なんですが・・・」



言いながら仕方のない事だとゆっくり立ち上がった姿が様々な角度からそれを確認してから小脇に抱えた。


それをなんとなく見つめ、さすがにもうこれ以上の会話はないかと身を引き始めた瞬間。



「・・・・親しいんですか?」



向けられた疑問に引っ込めかけていた体を再度外に出し、言葉の意味を探るように見つめれば、今度は意味明確にその疑問が投げられる。



「このフロアの彼女と・・・何か交流を?」


「・・・・・何故ですか?」



本当にそう疑問に感じる。


何故突然そんな事を疑問に思われたのか。


そもそも同フロアというだけで今対面しているこの人ともそんなに付き合いがあるわけでもない。


だからこそ怪訝に表情歪ませ探るように見つめて返答を求めれば、特に私の視線に怯むでも焦るでもなくその視線を向け声を響かせた。



「いえ・・・ちょっとした好奇心です」


「好奇心・・・ですか?」



好奇心で・・・・人の郵便受けを覗きましたか?


とは・・・聞く状況じゃあないか。


思わず口内にまで浮上した言葉をとどめて飲み込み、今集中すべきは彼の現好奇心だと自分の疑惑を後回しにする。


好奇心?


そんな突発的で裏のない好奇心なんておかしいじゃないですか?


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