夫婦ですが何か?Ⅱ
だから、いくら陰口を叩かれようが今更傷つかない。
正当な理由でそれに取り組んでいる私に何の非もなく、後ろめたく思う部分は一切ないのだ。
あんな、手抜き仕事をして、確信のない噂話をしている女たちに何をどう言われようが構わない。
私は自分の実力をこの会社で確立して安定することに必死なのだから。
「なんか・・・仕事馬鹿?」
私の仕事への信念を聞き入れた彼が、呆気にとられたように無言でいたけれど、不意にポロリとその言葉を落として。
どういう含みあってのそれなのかは知らないけれど、特別その言葉にも感情を揺らすでもなく返答。
「そうですね。仕事・・・大好きですよ。やればやるだけ結果の出る物が私は大好きですから」
「勉強とか?」
「成績は常に1,2を争ってましたから」
「・・・・・・仕事って言えば結婚もしてくれそうな感じだね」
「しますよ」
「ええっ!?」
「それなりに自分の条件に当てはまっていれば」
「カッコイイ~」
なんか・・・馬鹿にされているんだろうか?
テンション高めの声で、多分賞賛され手を叩かれている現状。
よくよく考えれば会って間もない、詳細も知らない年下の男と休憩中に和気あいあい。
更に気づいてしまった事に溜め息をついて頭を抱えて。
これではさっきの彼女達と同じではないかと。
彼女達より性質が悪く見えるのは、複数対1人であったさっきと違い、私は彼と1対1で会話しているのだ。
いつの間にか目の前の男のペースにハマって、普段以上に仕事外の会話を交わして。
喉を潤すようにコーヒーを口に流すと、不意に脳裏に思いだされた事で体を捻った。
確か、ポーチの中に入れてあった筈。
休憩の為に手に持っていたそれを漁って、記憶違いでなく入っていた物を摘まむと、何事かと目の前で見ていた彼に差し出してみる。
躊躇いながらも出してきた手にそれを乗せて、補足の言葉をつけずとも彼が何らかの反応を返すだろうとコーヒーを飲んで。
「あっ・・・」
「・・・・」
「のど飴と・・・いちごミルクだ、」
「・・・・先程・・・僅かに掠れて聞こえたので。あと・・・お好きでは?」
部屋を出る際に引っかかった違和感。
僅かに掠れた瞬間があって、それを直そうと軽く咳払いしたのも見逃してはいない。