夫婦ですが何か?Ⅱ
しかし、笑うと幼さが強調される。
いや、年相応というのか、さっきの愛想がいかに作られていた物か再確認する程。
「・・・子供は子供を謳歌してればいいんですよ」
うっかりとは言わないけれど、自然と零した言葉に彼の馬鹿笑いが静まって。
私の言葉の意図を確認するように、長身の身をかがめて至近距離から覗き込む。
訂正・・・、
似ているけれど・・・社長のグリーンアイとは異なる。
鋭く隙のないあの人の緑よりは、ずっと柔和で手を触れる余裕があるような。
「子供って・・・俺?」
「現状で、この会社に属していない未成年はあなただけでは?」
「まぁ、・・・確かに未成年ですよ。でも・・・後々はこの会社のトップに君臨する男だよ。今の内に自分を売りこもうとか思わないの?」
フッと、無邪気な笑みから意地の悪い物に姿を変えて、試すように、他の物なら惑わされそうな言葉で誘って。
スッと伸びた彼の指先が静かに、傷を負った私の唇に触れて。
「忠告しましょう」
「ん?何?」
「あなたがこの会社に入社した後にこの様な接触をはかれば・・・、『セクハラ』で訴えますよ」
「・・・・」
「それに、私は何の努力もなしに不釣り合いな上層に上がりたいとは思いません。それは実力でも何でもない。コネや媚で得たそれにどんな価値があるのでしょうか?」
「・・・・」
「ですから・・・、実力もないのに七光りのみで役職を得る上司には忠実にはなれません」
「俺も七光りだと思う?」
「さぁ?違うというのなら証明なさっては?まずは・・・その制服を脱いでそれなりの資格を得てから」
今の段階では根本的に条件不足だと指摘して、くるりと背中を向けると空になったカップを流しで洗い始める。
背後にいる姿の無言と不動。
ああ、さすがに気分を害した?
普通の人であるなら平謝りして言葉を取り下げる?
「・・・お父様に泣きついて私を吊し上げたいならご自由に」
「言っていいの?それでクビになっても」
「上等です。むしろ、息子の子供じみた戯言鵜呑みにして親ばか発揮する様な上司の元では働く気もありませんし。
・・・そんな馬鹿でないと理解し、仕事の面では尊敬すべき人間だと信頼しているのですよ。あなたのお父様を」
「・・・・すんごい忠誠心」
それは、
もし嫌味な意味だとしても私には賞賛に値する。