夫婦ですが何か?Ⅱ
ぽつりと言葉を零した彼に、特別憤りの感情は見えたりしない。
ただ目の前の私をもの珍しそうに見つめるグリーンアイは純粋で、よくいるバカボンとは違うのだと感じる。
「私は・・・、実力を伴わず人を見下す人間は嫌いです。でも、言葉に見合った実力を備わった人であるなら、その言葉も受け入れ逆自分を高めて認めさせようと努力する。認めてほしいとさえ思う。
あなたのお父様にはその価値がある。
でも、・・・あなたはどうですか?」
洗ったカップを静かに棚に戻し、確かめるように振り返って対峙する。
もう、おふざけの無いその表情は真面目な物で、向けられる気迫の様な物は天性の物か。
少し、
ああ、少しだけ、
期待はする。
七光りでなく、彼なら自分の光を見せてくれるんじゃないかって。
「・・・・ねぇ、・・・一個だけ・・確かめてもいい?」
「・・・・何でしょうか?」
「これ・・・どう思う?」
フッと口の端をあげた彼が、ポケットから折りたたまれた紙を取りだすと私に差し出して。
それを受け取り視線を落とせば、記入されているのは様々な会社の連名。
でも、どれも・・・
「一応、七光りでなく父さんに鍛えられてる最中っていうかね。これも宿題なんだけど・・・会社名とそれに伴って理解する事を上げてみてよ」
「・・・・・あなたへの宿題でしょう?」
「実力不足で分からない?」
「・・・・・」
ああ、コレは売り言葉。
そうと分かっていてもここは乗るべきなのか。
悪戯を仕掛けたように笑う彼に溜め息をついて、再度その紙を見つめると、
「まず・・・会社名から理解するのは、記載されているのは二分出来ます。当社と契約済みな会社と契約を成すか保留組」
「うん、」
言いながらポケットからペンを取りだして、契約済みを黒でマークし、2つに分ける。
次に赤いペンで、
「現時点でこの会社にとって有益になりそうな会社を順に並べるとこうなります」
「そうかな?2番と3番逆じゃない?」
「ええ、昨日までは・・・いえ、今現在はそうでしょうが近々入れ替わるでしょう。宣伝部の上役が変わってから地道にですがこの会社が利益を上げています」
「よく、・・・知ってるね」
「自分がいる会社の情勢や動きを把握するのは普通では?私からすれば何も知らず会社の言うがまま動くことの方がよっぽど恐いです。
そしてそこに在席するのであれば波に揺れる不安定さはいりません。
自分の身を守る為にも何事も把握し助言することも必要でしょう」
そう、
ある日突然肩を叩かれるような事や、突然の倒産なんてごめんだ。