夫婦ですが何か?Ⅱ



「随分・・・悪趣味な好奇心では?」


「俺の悪い癖なんです。微々たる疑問も気になったら追及する・・・」


「・・・・私の知り合いにもいます。・・・・好奇心と探求心の塊。・・・でも・・・、その人のそれは・・・」



もっと純真無垢な子供の様な探究心でしたけど。


それに比べるとどこか大人の駆け引きが見え隠れする目の前の男の好奇心。


まだ疑惑段階で露骨に表情に出すべきでないと理解しているのに。


どうやら出てしまっていたらしい。



「・・・気を悪くされましたか?」


「・・・『気を悪く』とは違うかと。・・・でも、そう投げかけるあなたこそ何か自覚あっての好奇心だったのでは?」


「特には、・・・しいて言えば今程のお知り合いの比較に付箋を残した発言をされたので切り返したまでです」



何だろう、自分も無表情なら対峙する相手もなかなかな無表情。


お互いにさぐりさぐりな言葉で無表情の下を疑って。


多分確信に切り込まない限りこの人は心の内を語らないと判断。


だったら面倒な遠回しなど不必要。



「失礼を承知で確認しても?」


「どうぞ?」


「昨日・・・郵便受けの前でお見かけした際、我が家の郵便物に好奇心働かせておられた様にお見受けしましたが?」



非難する様な口調ではなかったと思う。


実際非難する気などなくて、純粋に抱く物は【疑問】の一色。


何故、あまり交流もないこの人が、もし間違いでないのなら我が家の郵便物に興味抱いたのか。


色々考えてみても自問自答に明確な答えを得られるはずもなく。


やっと追求出来る場面に突き当たったと、言葉を響かせスッキリした。


あとは・・・どの様な返答が返されるかである。


私の言葉ばかりは丁寧な追求に特別表情を変えるわけでもなく、焦りも見せずどこか考えふける感じに視線が空(くう)に留まって。


数秒後に思い当たるような声を発して視線がゆっくり私に戻った。



「・・・あなたが気になって、」


「・・・」


「あなたの私生活覗きたくて、」


「・・・」


「時折、覗いて盗んで生活を見張ってました」



静かに紡がれた言葉は本来鳥肌がたってもいいほどの戦慄の響き。


なのにさして表情崩さず腕を組んだまま危険な言葉を告げた相手を見上げた。


だって・・・、


働かない嫌悪感。


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