夫婦ですが何か?Ⅱ
そんな危険を回避できるなら、でしゃばりだと分かっていても、秘書としては無駄な知識や見解でも、私は常にそれらを把握していたい。
「そして・・・こちらの、保留の方ですが。・・・今日までの現状からの番付ではこんな感じでしょうか」
「今、一番急上昇しているこの会社が2番?」
「確かに【急】上昇ではありますが、こちらの会社の方が少しづつですが変わらずに上昇を続けているんです。こちらも急激に利益を得たいのであれば前者のとの契約もいいでしょうが、安定した利益を求める方が社長の理想に近いのではと。
・・・まぁ、私の個人的な見解ですが」
「ふぅん、」
「お父上に宜しく、」
「はっ?」
「どうせ・・・社長の意地の悪い抜き打ち視察だったのでは?」
フンっと鼻を鳴らして彼にその紙を手渡して、気がついていた事を指摘してみると。
唖然とした顔を見せていた彼がすぐに小さく噴きだして小刻みに笑う。
ああ、やっぱり。
「父さんをよくお分かりで、」
「他の秘書にもこんなテストを?」
「うん、まぁね。みんなそれなりに答えてくれたよ。俺に取り巻いてたお姉さま達もこの会社に採用されただけはあってなかなかの回答」
「・・・・で、しょうね。現時点でクビになってませんから」
「でもねぇ・・・、過去・現在止まり」
「・・・・」
「昨日までの明確な分と、今現在の事まではそれなりに把握してくれてるんだけど・・・・未来形がないんだよね。こうしたら利益が上がるとか、目に見えての番付だったり」
「まぁ、それが普通では?秘書は別に予言者でもありませんし、メインは上司の歩く手帳みたいな物ですから」
「ははっ、歩く手帳!でも・・・父さんはそれだけじゃ満足しない人だからねぇ。・・・・・俺も、」
ニッと笑った顔が社長に似ている。
強気で貪欲で、
欲しいものは絶対に手に入れるような男だ・・・彼も。
そう感じる緑の眼光に多少鳥肌立って、でも嫌悪でなくどちらかと言えば期待の。
でも、
まだ、
「まぁ、頑張って学業を終えてきてください。私、戻ります。休憩時間も終わりますから」
「ねぇ、」
「はい、」
「名前・・・教えて」
もう、おふざけには付き合ったと、その身を返して給湯室の出入り口に足を向けて。
すぐに呼び止めに来た声に反応して振り返る。