夫婦ですが何か?Ⅱ
相手も何食わぬ顔で言ったから?
それもあるけど多分そのせいじゃない。
自分の危機感が薄いと言われたらそれまでだけれど、少なくとも今この時は彼に警戒働かせての追求だった。
つまり、
告げられた言葉にその危険性が追いついていないのだ。
むしろ、・・・皆無?
相変わらず長い前髪がチラチラとその目を遮っていて、でもその奥の目は姿程脱力を示していない。
無だけど冷静な眼光だと感じながらこの後の反応をどうしようか迷い小さく息を吐いた。
そんな瞬間を見計らってか、
「・・・なんて、お答えすればあなたの疑惑に盛り上がりもあったのでしょうが、」
「別に盛り上がりは求めてませんが、」
「まぁ、確かにお宅の郵便受けを覗いたという疑惑に対しては否定を返せません。でも、自分の擁護をして返答すれば・・・、
あっ、このピザのチラシ俺のとこには入ってないや。・・・と」
言われた言葉に瞬時に回想した郵便受けの中身。
大したことのないDMやチラシのみで、そのチラシには確かに言われた様なピザの写真が掲載されていた記憶がある。
裏付けありの告白に偽りはないだろう。
疑惑に対して正当な返答。
中に自分の不利になる非も認めての。
だとしたら私も認めてすべき事は決まってくるのだ。
威圧的に組んでいた腕を解くとまっすぐに身を伸ばしてから軽く頭を下げる。
確かに相手も疑惑的行動をとったのだから深々は下げずに。
「申し訳ありません。多少事実よりいきすぎた仮説の疑惑を抱いておりました」
「・・・まぁ、当然でしょう。誰だって自分のプライバシー内を不躾に覗かれたら過剰に疑うのが正常かと。
・・・特に、あなたにとっては必要な警戒心だ」
最後に嫌味なのか判断のつきにくい言葉を告げた相手にゆっくり視線を合わせていく。
絡んだ時にはその口の端をクッとあげ、話が終わりと判断したらしい姿が扉に向ってその身も視線も動かした。
なのに、
「ああ・・・」
思い出したかの様に響いた声に自分も部屋に戻しかけていた足を止め視線の回帰。
捉えたのは玄関扉に手をかけた状態で私を振り返っている彼の姿。
そして静かに動きだしたその言葉にこそ心揺らされる結果となる。