夫婦ですが何か?Ⅱ
「俺の好奇心の元を辿れば、・・・ご主人と彼女がエレベーターに乗り合わせていたので気になっただけです」
「・・・」
「ただ微々たる疑問として・・・彼女とは【近所付き合い】豊富なのかと」
「・・・・特別は。・・・いえ、私は所詮後参者ですから。
私が主人と彼女の【近所付き合い】については把握しかねている部分が大半かと?」
そう、このフロアの付き合いを確認するのなら私より確実に古株なこの人の方が詳しいであろうに。
あえて確認をいれたのは単なる無知か、図られた、答えを知っての問いかけか。
後者が強だと感じつつも今ほどの過剰な自分の危惧もある。
それは踏まえて相手に向ける疑問を見せず返答をすると、変わる事なき無表情で『なるほど、』と、ポツリ零してその姿は消えていく。
彼の自室の扉の向こうに。
静かな空間に自分自身と中途半端な疑惑が残る
。
あと、
何とも言い難い不完全燃焼の感情。
結局、あの人は何を確認し、何を私に告げたかったんだろう?
せっかく切り込んで抱いていた疑問を解消したのに。
そして腹正しくもモヤモヤと何かが疼く胸の内。
はぁっ、と、あからさまに息を吐いたのはその感情を振り切るつもりも含め。
でも、もうここに留まる理由もないと、視線を扉に移し一瞬の不動の後に今までとは真逆に当たる方を振り返ってため息をついた。
社会マナーよ千麻・・・。
「・・・おはようございます、」
「おはようございます」
いつからそこに?
そう続けたくなる言葉を飲み込んで、何やら折り畳まれた段ボール片手に私に微笑む男を見つめた。
新参者・・・新崎。
私にとってすれば、どこか榊より胡散臭く警戒する対象であって。
こうして日が開けても継続する感情素直に、今日もその笑みに好感は抱けない。
マナー的に挨拶は交わしたのだから充分だろうと手に触れていたドアをガチャリと響かせた瞬間。
「私生活に探りを入れ合う関係ですか?」
耳に入り込んだ声に舌打ちを返さなかったのは大人の反応。
でも意図を探る様な眼差しで振り返れば、さっきと変わらぬ微笑み。
むしろさっきより楽しげに見えるのは気のせいか。
やっぱり、
いや、
大人気ないとわかってはいるけれど・・・、
この男・・・苦手だ。