夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・語りあってはいませんが?
そして、そう探りをいれてこられてるのはあなたの方ではないでしょうか?」
「ははっ。あなたの口調って昨日までは礼儀的な敬語なのかと思ってましたが、どうやら癖により近いんですか?
ご主人にも・・・敬語だったかと記憶してますが」
それこそ余計なお世話で私生活関与の疑問じゃないのか?
ただでさえ苛立つそれを煽るような偽善的微笑み。
私の投げた言葉に的外れでプライバシーに踏み込む様な不躾な問いかけを笑みでカバーしているつもりなのか。
でも、
騙され流す様な女でもありませんが?
「私の口調の由来や関わる生活をただの隣人であるあなたの知識に加える必要も理由もないかと?」
「もちろんです。
ただ、・・・ご主人にも敬語だったので、」
「何か問題が?」
「いやに他人行儀だなぁ。と、関係は親しいのに一線引いているような」
「・・・・・余計なお世話ではないでしょうか?」
確かに夫婦となった今も私は彼に敬語だし、彼が言ったように癖でもある。
だから一線を引いているつもりもないと言うのに。
でも・・・・・他人から見たらそう感じるのか?
まさか、・・・言わないけれど彼も不満に思っている?
私の敬語に一線を感じて?
・・・・・ないな。
一瞬真剣に考え混んでしまったけれど、脳裏に模範回の様に浮かんだのは鬱陶しいくらいに自分にまとわりつく彼の姿。
『千麻ちゃ〜ん』
姿を思い出せば伴って回想【されて】しまうあの響き。
それこそ良くも悪くも習慣だ。
「余計なお世話かとは百も承知ですが、・・・ご主人の余裕の振り幅増えれば余計で過剰な嫉妬の対応も減るのではないかと思いまして」
相も変わらず嫌味な笑みで、弾かれた言葉も確実なるそれ。
瞬時に反応し向けた視線は多分遠慮を取り除いた冷徹な物だったのではないだろうか?
久しく不在だった誰かに敵意を抱く感情。
普段無関心な私がそれをいだくのは大抵・・・、
「余裕が・・・ないと?主人には、」
「いち・・・、見解です。何せ言葉を交わしたタイミングもあんな時ですから」
「【あんな時】とご自覚あるあなた自身の非は棚に上げての発言でしょうか?」
「まぁ、あの場合普通の男性であるなら確かに憤り抱いてもいた仕方のない状況ではありましたけれどね・・・」
そう言いながら嘲笑的な笑みからの言葉はどうも彼の存在を低く捉えた物に感じる。