夫婦ですが何か?Ⅱ
確かに彼の独占欲は嫉妬の余裕は狭いと言える。
でも、誰だって自分の特別の対象には少なからず同じような態度を取るのではないだろうか?
「・・・・・彼を・・・馬鹿にしておられますか?」
「フッ・・・敬語でも感情が出た。・・・・一線置いて配偶者を示す言葉が【主人】。なのにあなたは今ご主人を【彼】と示した。
・・・・俺に感情的になってるんですねあなたは、」
「・・・・感情的にさせようと嫌味な駆け引きの言葉で引き上げたのはあなたでは?」
「・・・否定はしないんですね?」
「【こういう場面】で虚勢張っての偽りは自分に隙を作るだけだと経験からも記憶して応用しておりますから」
特に、あなたのように腹の内が探れない相手にはね。
過去の彼や恭司のように言葉遊びが得意でその裏に何を隠しているのか分からない相手には下手な隠し事はしない方が得である。
だからこそ逆に現状を露見して、それでも強気に出ている方が堂々と相手に対峙できるのだ。
一瞬だって踏み込ませたくない。
さすがに警戒警報鳴り響く自分の体が自然と防衛態勢に入ってしまうほど。
腕を組んで睨むまでいかない視線で彼を見つめて。
攻撃的感情でもそれは目の前にすべてを晒してはいけない。
だからこそ冷静に心のざわめきを奥に仕舞い込んで今ばかりは鍵をかける。
ああ、懐かしい・・・。
彼に尽くした5年も、度々こうして自分の抱く不満を抑えていた瞬間があったと思い出し心で笑った。
「・・・・・やはり・・・あなたは賢い女性だ」
「・・・・【ありがとう】とでも言わせたいのですか?」
「いえ、・・・でもあなたに対しては賞賛です。
冷静で、頭の回転も速く、自分の現状晒す事で余計な隙を自ら潰す。
なかなか・・・並の女性には出来ないことかと?」
「【女性には】・・・・、男尊女卑の思考でもお持ちですか?」
「まさか、社会を回すのは賢い人間がふさわしいと思っているだけです。・・・勿論、男女問わずにね」
結局何が言いたいのか。
自分で話題を振るくせに、私が切り返した言葉にはどこかずれた回答が返ってくる男。
私の嫌味にも終始にこやかに微笑むその顔は何か一枚仮面でもつけているのではないかと言うほど。
イライラする。
何がイライラするって・・・、結果どこか・・・、
「・・・・あなたにはもっと適した相手がおられたのでは?」
ああ、
キリキリと・・・鳴る。
限界という名の細い細い糸が・・・。