夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・・どういう意味でしょうか?」
発した言葉は感情的でなかった筈。
ただ冷静にその言葉を響かせ相手の返答を待って刺すような視線で挑んで見上げて。
当然怯むでもない相手が、また悪びれることなく嫌味な言葉を口から零す。
「気を悪くしないでいただきたい。・・・ただ・・、あなたと言う人を高く評価しただけです」
「・・・の、割にその裏に嫌味な悪意が見え隠れして馬鹿みたいに喜ぶ気にはなれませんが?」
「・・・・・あなたは・・・賢く綺麗です」
「・・・・・」
「だけど・・・安心感からなのか、彼の独占欲に浸って守られ警戒心がお留守の時がある」
「・・・・すみません、何の話でしょうか?」
本当に・・・話の向きがクルクルと回転するからその言葉の響きについて行くのがやっとで、端を掴んで追い付いてようやく疑問響かせてはみたけれど。
返されるのは強まった微笑み。
たっぷりと含みありの。
「・・・・・ご主人の余裕の幅に対してあなたの無自覚が上回っている時があるのですよ」
「・・・・・」
「どこか・・・純粋なる子供の独占欲お持ちのご主人の様です。・・・あまり無自覚に他の男性と関わり持って不安にさせない方が良いのでは?」
ニッと強まった口元の弧。
それが結論だと示すような笑みに一瞬呆然と不動になって、でもすぐに冷静さの回帰。
間抜けに半開きだった唇をしっかり密着させ、でもすぐに軽く開いて『フゥッ』と息を吐く。
そんな私にクスリと小さく笑い声響かせた男がスッとその身を動かし、小脇に畳まれた段ボール抱え私の横をすり抜けようとした瞬間。
「ダンボール・・・」
「はい?」
「そのダンボール・・・不必要ならいただいても?」
「・・・・・いくらでも、」
一瞬呆気にとられたように見えたけれど、すぐにお得意の笑みで小脇に抱えていたそれを私に差し出し手渡してくる。
それを『どうも』と小さく答えて受け取って、大きさを確かめるかのように眺めてみせた。
「・・・丁度・・・、必要であったので」
「まだ家にはいくつもありますが?」
「ああ、では・・・・いただいていた方が近所づきあいには平和かと・・・」
「はっ?」
さすがに疑問映した男の表情を捉え、このタイミングだと思った瞬間に溜めこんでいた感情の部屋の開錠。