夫婦ですが何か?Ⅱ
その安堵に素直に息を吐きだせば伴って僅かに持ち得た素直さの浮上。
私の溜め息を自身に対しての反応だと勘違いしたのか、変に焦っている彼に真正面からスッと近づく。
そうして未だグリーンを揺らす彼を確かめるようにじっと見つめ上げてからトンと軽く額を彼の肩に預けて息を吐いた。
「・・・・・向いてないんでしょうか?」
「はっ?・・・何が?」
「・・・・・私に主婦業務は向いていないんでしょうか?」
「・・・・・うん・・と、・・・千麻ちゃんのものさしは一般常識より厳しくて測りにくいけど・・・・・・俺よりは主婦向きじゃない?」
「・・・・・ただの・・・・」
「うん?」
「ただの・・・あなたの秘書であった時間に戻りたいと思う自分がいるんです・・・」
「・・・・・・はっ?」
まだ自分としては継続する言葉ありのセリフ。
だからこそ微々たる間に心底焦ったように私を引きはがして驚愕のグリーンアイで覗き込まれた瞬間にはこっちが唖然とした。
面白いくらいに動揺に揺れて、どこか白くなっていく顔色に何を誤解しているのか自分の言葉を回想して分析してしまうほど。
でも間も飽かずその答えは彼の口から響かされた。
「ちょっ・・ちょっと待って待って・・・、えっ?ひ、秘書だった時間って・・・・、
・・・・・・っ・・俺と離婚したいって事!?」
「・・・・・・しませんよ。・・・絶対に嫌ですから」
「っ・・千麻ちゃん・・・・、俺の誤解の飛躍にそんな過剰に否定してくれるなんーーー」
「水城 翠姫(みずき みずき)はあの子が可哀想ですし・・・」
「そこっ!?俺と離れたくないとかでなくてそこ!?」
「つまりは・・・」
「えっ、さらっとこの話終わり?!」
「っーーーもう・・・余談に逸れるので話す気なくなりました」
どうしてもちょっとしたはずみで話の腰が折れてしまう私達。
今も放っておけばずるずると意味のない夫婦漫才化しそうだと軌道修正を試み、最終的に自ら話のタネを摘み取ろうと背中を向ける。
当然の如くあっさり彼の手によってそれも阻まれるものであるのだけども。
「ちょっと、ちょっと・・・ねぇ、待ってよ!全然何一つ解決してないじゃん?」
「別に・・・・・っ・・本当にたいした事じゃないんですって。私の許容範囲が狭いってだけです」
「だから・・・何の?!」
ああ・・・もうっ・・・・。