夫婦ですが何か?Ⅱ




大したことじゃない。


そんな風に今更手を振って誤魔化し彼の前から立ち去れば、ここまで巻き込まれて頷けるはずのない彼が私の背中を追って来る。


最初はただの意地っ張りであったものが冷静が徐々に入りこんできて、見事入りこんだ別の感情が露見を阻もうと羞恥を与えてきたのだ。


だからこその逃亡でもあったのに、きっともう逃がしてはくれないであろうこの男。


言うまで絡んでくる長時間を思えば一瞬の気まずさの方がいくぶんか楽だろうと、歩みを止めくるりと回転すると彼と対峙する。


私が振り向くことを想定していなかったのか勢いよく振り返った彼が一瞬私の気迫に呑まれて怯む。


そんな姿を無表情で見つめ上げ不本意だと眉間に皺を刻むとようやく素直さの暴露。



「・・・・あなたの妻である事に憤り感じます」


「・・っ・・・えと・・・俺・・何かしたんでしょうか?」


「本当・・・・何であなたの為にこんなにイライラしなくてはいけないのか・・・」


「ええっ!?俺、真面目に思い当る節ナッシングなんだけど!?」


「・・・・・・・あなたの・・・妻でなければ・・・・」


「・・っ・・・」


「・・・・こんな主婦の試練である近所付き合いに苦労することもストレス抱くこともなかったでしょうし、」


「・・・・・はっ?」


「妻として【夫】が愚弄されることに憤って、子供に自分の怒り声を子守唄にすることもなかったし、帰宅早々の夫に八つ当たりすることもなかったでしょうよ」


「・・・・・・」


「っとに・・・・、私はあなたを無知の他者に見下され馬鹿にされることが結婚してから・・・・・っ・・上司と秘書である時から心底嫌で我慢が出来ないんですよ!」



トンッと人差し指で彼の胸をついてトドメ。


言いだしてみればやはり我慢のできない不愉快事項だと全力で不満を眉間に示して息をあげて。


それでもやはり彼にあたるべき事ではないと冷静さを引っ張り出しゆっくり息を吐いてその手をどけた。


そして下し冷静になった目の視線で彼の装い捉えて困ったように小さく笑って額を押さえる。


傍から見たら・・・どんだけ愉快な夫婦漫才?


2人してキャラクター装う様なルームウェアを着て、確実にシリアスさ皆無の姿であるのに。


客観的に今の現状を想像してしまえばなんだかその間抜けさに再び小さく笑いを零した。


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