夫婦ですが何か?Ⅱ
瞬時にそれを掻き消す彼はやはりさすがだと思ってしまう。
でも、対峙したのが私であったのが運のつき。
「ほぅら・・・、後ろめたい物を背負っている逢瀬は私ですか?あなたですか?」
「別に乗り合わせただけだよ。それに・・・何年も同フロアなんだから会話くらいするよ」
「まぁ・・・そうでしょうね。私だって特別気になるポイントでもなく、追及する気もなかったのですが・・・」
「・・・本当は疑ってたんじゃなくて?」
「申し訳ありませんが・・・、ねちねちと疑って探って陰湿な真似をする程興味の対象ではありませんでした」
「よく言うよ・・・、芹ちゃんとの時は雛華と探偵ごっこまでしてたくせに」
「あれは疑うべき要素そろっていた上での行動です。まして、人様の家庭崩壊の危機も絡んでいましたし」
「じゃあ、今度はご近所さんに証拠確認の情報収集でもしてたの?」
「・・・っ・・・呆れた・・・・」
向けられた悪意たっぷりの嫌味に開いた口が塞がらない。
それを示した口が空気に触れて乾いていくのを感じる。
なのに喉元まで込み上げて溢れ出しそうな感情の波を感じて。
冷静に留めてもいいのだ。
冷静さを僅かにも彼にも感じていたら留めただろうけど・・・無理。
そう悟った時にはすでに私の感情は音になって部屋に響いていて、
「あなたが過去に彼女と話そうが、キスしようが、めちゃくちゃに抱き合ってようが、私には微塵も関係のない事です!!って言うか・・・・、
今更あんたの節操のなかった若気の至りに誰が感情的に妬くかっ!!」
「っ・・1回しかしてねぇよっ!!」
あっ・・・、
すっごく唖然茫然。
私でなく彼が・・・・。
私の勢いづいた言葉にとっさに負けじと返事を返したのはさすがなんだろうけれど、放った言葉はどうやら彼自身にも切り込む両刃の剣だったらしい。
みるみる『やってしまった』的に青ざめていく姿に、目を細めて探るように見つめる。
嫌ってほど追及して追い詰めるべきか・・・、彼が戸惑うほど無言の拒絶をしめしてやろうか。
その二択に揺れながら、動揺に緑を揺らす彼を見つめる。
いつもなら後者。
でも・・・・追及に揺れたのは彼が珍しくここまで焦りを見せたから。
ただの過去の思い出なのだったら今更ここまで動揺を見せない気がする。
だとしたら・・・、
「・・・・ダーリーン?」
響かせた声に勿論小さく肩を揺らしたのを見逃さない。