夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・傷つきましたよ」
「っ・・・・」
「・・・・結局あなたは私を信用していないのだと、」
「ちょっ・・・何でそんな結論?!」
「『何で?』疑っておいてよくそんな事問いかけてきますね。言っておきますが私の逢瀬に後ろめたさなんて物皆無です。だからこそ堂々とあなたに話題に出来るんです」
「それは・・・ごめん、さっきのは感情的で勢いで責めたのもあったけど・・・疑ってたんじゃなくて、
・・・・・心配なんだって・・・・」
もどかしい苦悶の表情で、言葉を探しながら弁明する彼の背後にまだ何か秘密を感じる。
それがあるから普段は能弁な彼がこうして戸惑いながら口を開いているのだ。
でも、いちいちすべてを知ろうなんて感情は私にはない。
そう、悲しいかな私はそういう女なのですよ?
過ぎ去った時間よりも常に今を見つめて歩くのに必死で。
一つ縋りつくとすれば・・・・、ようやく積み重ねてきた夫婦として・・・家族としての今の平穏。
仕事もしてない今、私が唯一縋りついて守りたいのは・・・。
「疑わしきは罰せず・・・」
「・・・えっ?」
「はぁ・・・・、諸々不満も多々ですが・・・、過剰であろうと私を心配しての発言だったと飲み込みましょう」
「えっと・・・」
「だからあなたも不満ありきでしょうが今は飲み込んで収めるのが得策では?」
「・・・・・うん・・、だね・・・」
そう言いながらもきっとまだ念を押したいのだ。
チラチラ揺れる緑が・・・、軽く開いている唇がそれを暗に伝えてきて。
不満を漏らすことを制した代わりに、その念押しの内容を自ら言葉に発していく。
「・・・勿論・・・あなたの不安煽るような接触は出来うる限りは避けるし警戒もしますから、」
「・・・・【物わかり悪い】なんて言ってごめん・・・・」
「・・・・・あなたが感情的なお子様なのはもう何年も前から存じてます」
今更だ。
そんな風に全てをまとめるように息を吐くと、すっかり熱が下がり消沈している彼の至近距離に寄り、クシャリと頭を撫でてそのまま頭を引き寄せた。
自分の肩に頭を預けさせて、柔らかく撫でながらその存在を確かめる。
「・・・・・安心してください」
「・・・ん?」
「・・・あの瞬間に比べたら・・・どれもそこまで衝撃受ける物でもない」
「・・・・」
「そう簡単にあなたの重みにグラついてよろめく女なら再婚なんて決意してません」
「フッ・・・・・カッコイイ・・・・」
小さく噴き出した彼の息が首筋にかかって、後れ毛が肌を掠めるのがくすぐったいと感じた。