夫婦ですが何か?Ⅱ
でもすぐに背中に回った彼の手にその微々たる感覚は掻き消されてしまう。
「・・・・千麻ちゃんには敵いません」
「そうでしょうとも。むしろ、そうでなければこの夫婦関係成り立ちません」
「フフッ・・・俺が負けるのが絶対の夫婦関係?」
「そんな事は。あなたの言い分が私を納得させる正論であればいくらでも負けてさしげましょう」
「・・・・・でも、俺千麻ちゃんにクールに言い負かされるの結構感じちゃうんだよね、」
「・・・M」
「うん・・・Sで男気ある千麻ちゃんに惚れ込んでますとも」
「こんな細腕に寄りかかるつもりですか?」
「フッ・・・・・支えてハニー」
「っ・・・ちょぉぉぉっーーー」
彼の声に悪戯を感じた時には遅く、牽制かけようと声を響かせた時にはずしりと預けられた体重に耐え切れなく後ろに倒れた。
なんとかしゃがみ込むように床にお尻から倒れ込んで、でも重さや勢いの反動で背中や頭も順に床に張り付いた。
一瞬呆然と天井を見つめたのに、すぐに耳に入り込む噛み殺したような笑い声に眉根を寄せると。
「ダーリン・・・・、せっかく治めた私の怒りを浮上させたいとしか思えないけれど?」
「嫌だなぁ、むしろ仲直りにじゃれついたまでだよハニー」
「じゃれて噛みついて・・・うっかり噛み殺してもいいかしら?」
「・・・・噛む?」
「本当・・・M」
してやったりと嬉々とした笑みで見下ろしてくる姿に脅しをかけても、逆に噛みつけと言わんばかりに首に触れて示してくる彼に呆れた眼差しを向ける。
なのにその眼差しでさえもご馳走と言わんばかりにニッと笑う姿に絆され力が抜けてしまう。
なんなんだか・・・。
さっきまで真剣に怒ってぶつかって、なのに今はこうしてふざけて床の上に寝転んで。
これが・・・夫婦?
正解?
「あ~・・・ははっ・・・」
「おっ・・・千麻ちゃんのわけわからんツボ入った?」
「失敬な・・・」
でも・・・ツボと言えば・・・ツボなのかもです。
悔しくも過去は不必要だと思っていた・・・・。
あなたの熱や体重と・・・
屈託のない笑みに安堵するこの瞬間に。
喧嘩もすれ違いも夫婦仲を強めるためには必要なんでしょう。
そうして乗り越えて強固なものとなって・・・、情熱的な愛情は薄れても年老いてまで隣に並ぶ仲になるんでしょう。