夫婦ですが何か?Ⅱ
『ーーー全部打ち明ければよかったのに、別に恋愛関係だったわけでもなし』
「問題は【関係】じゃないんだよ。・・・もっと複雑で・・・」
『・・・法律に触れるような浮気したわけじゃないのに。彼女も過去の関係にグダグダ言う人じゃないんでしょ?』
「言わない。千麻ちゃんはどうにもならない過去の時間にヤキモチ妬くようなおバカさんじゃないし、大切なのは今だって分かってる・・・・・賢い人だよ」
『惚気話は聞く気がないけど、』
盗み聞いた言葉に賞賛があるとは思わなかった。
エレベーターホールへの角を曲がった瞬間、見慣れた姿の隣に昨日の喧嘩の話題にも上がった彼女を見つけて愚かにも身を潜めた。
そうして微かな響きの会話を拾い上げれば昨日の話題同様に、彼女自身にもやましい感情は無いのだと理解する。
そう2人して過去の楽しんだ一夜の記憶のように語っていて、やはり彼があそこまで動揺する理由が分からない。
今現在も浮気しているような雰囲気もなしに、そして彼の口から零れた私を理解した解釈。
こんな風に潜んで盗み聞いたのが後ろめたくなるほど理解を示し賞賛与えてくれた姿に純粋に心臓が強く跳ねる。
ああ、早く手帳を渡して立ち去ろうとその身を出しかけた瞬間。
「・・っ・・でも、千麻ちゃんは絶対に傷つく気がする」
ああ、また・・・隠れざるを得ない場面だ。
出しかけた体をリバース。
彼の苦悶の響きの答えがこの先に告げられるのかと息をひそめて神経を張る。
聞いていいのか・・・。
彼が私を思って秘めている事実を。
そんな迷いを抱いている最中時間が止まるでもなく、聞くべきか迷った答えは待ったもきかずに与えられた。
「・・・・・法律的にも、・・関係的にも浮気にはなっていないんだ」
『・・・そうよ、なのに・・・何が問題?』
「・・・っ・・・」
何となく、彼が振り返ったのを感じる。
多分、私がいないか振り返って確認したような。
でもすぐに【いない】と判断したのか静かに響いた彼の【問題】。
「時期・・・・・」
『3年前?・・・・あなたは法律上も実際としても何の縛りもなかったでしょ?』
「でも・・・・・・・彼女を好きだった時期だ・・・・」
ああ・・・・、
ああ、そういう・・・。