夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・・・別居・・」
「・・・・・・・・・はっ?」
「・・・・なんか・・・・感情落ち着くまで別居します」
最善策だと思いつきを淡々と結論を響かせると、手元にあったカバンや携帯を持ち更に翠姫を抱え上げ躊躇いなく歩みを進める。
当然・・・。
「ちょっと、待って待ってぇ!!いきなりっ!?落ち着こう!?ねっ?」
「いえ、なんか今はどうあってもイライラしそうなんで、翠姫の為にもこれがベストかと、」
「えっ、待ってっ!!嫌っ!!絶対またコレ、マズイって!!離れたらすれ違う~!!千麻ちゃんと翠姫と離れて暮らすとか無理っ!!」
「何を大げさな・・・・、別居と言っても、」
彼の嘆きを聞きながら手をかけたのは寝室の斜め向かえにある客間の扉。
そして中に入り込むとくるりと向きを変えて彼の侵入を拒むように対峙する。
「入らないでください」
「・・えっ?・・・あの・・何で?」
「だから・・・別居。・・・家庭内別居です。私の気持ち落ち着くまでリビング以外での接触は避けさせていただきます」
「はっ・・・」
「そして・・・・別居中は私には性的な意味で触れないでいただきますから」
「・っ・・・嘘・・・・」
「至って本気です。触ったら・・・・・吐いて叫びますよ?」
吐きも叫びもしないけれど。
決して本気であの頃の様な嫌悪感があるわけじゃなく、でも過去を引用しての脅しだ。
多分彼には効果絶大なトラウマつきの脅し。
だって・・・・、一時的なことかもしれないけれど、どうしても今はショックでイライラして感情的に許せないのだ。
「ち、千麻ちゃん・・・考え直さない?落ち着いて話せば・・・ね?」
「・・・・・・・・いってらっしゃいませ、【元】副社長様」
にっこりと微笑み名前でも呼び名でもない響きで出勤を促すと、彼の返答待たずにその部屋の扉を閉めた。
「千麻ちゃんっ」
響いた自分を呼ぶ声と、閉まった扉にコンッと何かが当たる音。
多分・・・彼の頭。
私が扉を開けるのを期待して待ってる?
でも・・・・開けませんよ。
扉の向こうに彼の気配を感じながら自身も扉の前で留まって、最初に動きを見せたのは彼。
「・・・・・・いって・・・きます・・・」
消沈し諦めた声音で響いたのは出勤の言葉。