夫婦ですが何か?Ⅱ



廊下を力なく歩いて玄関に向かう気配を感じ、扉の開閉音を確認して更に数分待ってから部屋の外に顔を出した。


薄暗い玄関先にその姿は無く、安堵していいのか寂しいのか。


そして無意識に指先伸ばした先にあった筈の髪がなくてもどかしい。


切ってしまった。


秘書であった時ほど短くはないけれど、今までよりは確実に短い。


なんだろう・・・人生ゲームで思わぬ逆戻りさせられたような気分。


ふりだしまでではない。


でも確実に今まで何も知らずにいた場所からは遡った。


ああ、そうか・・・・・私達の関係はそういうものであった。


3歩進んで2歩どころか4歩下がってマイナスな時も。


最近は進む一方で忘れていた。と、皮肉にも思い出して小さく笑った。



「これも・・・・理想の夫婦になるまでの勉強で試練なのかしらね」



そういう事なのだと自分に言い聞かせ納得すると、ゆっくり息を吐いてリビングにその身を戻していく。


降りたがる翠姫を元のおもちゃのところに降し、キッチンに舞い戻って冷蔵庫を開き中身を確認する。


さぁ・・・何の天ぷらにしようか。


そんな事を思って。






前回からの進歩。


そう・・・、これは前のように関係断ち切る悲愴感たっぷりの揉め事じゃなく。


むしろ夫婦だからこその・・・・喧嘩。


喧嘩だ・・・。


やっと正当にその名をつけられる、今までの微々たる物とは規模の違う本当の【夫婦喧嘩】なのだ。


やや相手はすでに負けオーラ背負っているけれど。






さぁ・・・・、



どうやって私達らしく解決していく?




ダーリン?






< 85 / 574 >

この作品をシェア

pagetop